『現代芸術の地平』四

 市川浩『現代芸術の地平』岩波書店1985年初版、「現代芸術の境位」「現代芸術の可能性」1977年発表を読んだ。後者から。

《 より自由な方向がもとめられるのは、型の可能性がくみつくされ、形骸化して、型破りによらなくては意味のある表現を 生みだせなくなったときである。 》 107頁

《 現代では感覚的体験と知的理解あるいは知的批判という分裂は必然であるが、同時にこの二分法は役に立たない。 見ることが観念に移行し、観念が見ることに移行する境界から作家の仕事がはじまる。 》 113頁

《 現代の芸術家が現実に向かう志向の仕方には、さまざまのタイプが見られるが、それぞれの志向をもったすぐれた作家の仕事は、 独自のプリヴェンションを内蔵しているといっていいだろう。
  その第一はシステム志向である。システムは感覚的現実から距離をとり、慣習化し、制度化した感覚を批判する。(略) それはまた情況からの自立をゆるすことによって、情況主義の危険をのがれている。その反面、システムはシステム自身の 自己完結性によって閉鎖的となり、よういに画一化し、現実との接触を失わせる逆の危険をはらんでいる。 》 114頁

《 第二は情況志向である。情況志向は現状肯定ではない。情況を読み、みずからの作品を情況のなかに積極的に位置づける ことによって、作家は一方では自己を背後から支配している検閲機構を対象化し、他方受け手が気づかない現実を受け手に 示そうとする。(略)情況志向の作家は時代とともに歩むが、同時代の受け手にとって先どりされた情況の表現は、やがて のりこえるべき障害となる。デュシャンがそうであったように、すぐれた情況志向の作家は、一見反時代的であることによって、 自ら情況そのものを作りだすのである。 》 115頁

《 第三にシステムをも情況をも信じられない作家は素材を志向する。ものは、われわれが日常無意識のうちにかぶせている 感覚のヴェールをひきさく潜在力をもっている。ものの力は制度や文化諸構造が分泌する意味をこえ、既製の意味の連鎖を 切断する。それは非人間的な秩序の存在を垣間見せることによって、われわれの世界を拡大するのである。(略)しかし この批評性は、単なる素材としてのもののうちに二重化されているから、作家が素材に無反省によりかかるとき、このものの 二重性は消えうせ、素材志向は、現実確認と現実肯定以上には出なくなってしまう。 》 115-116頁

《 第四の志向はこのような意識下の傾向性を芸術の根としてさぐろうとする根源志向である。(略)根源志向は、感覚の 擬西欧的な表皮とともに、土俗的な真皮をもつき破るものでなければならない。根源志向はわれわれの感覚の根の探求であるが、 それが事実確認に終るかぎり、批評性はもちえないであろう。 》 116頁

 今朝は寒かった。-3.1℃。 午前、数年ぶりに整骨院へ自転車で行く。膝の周辺が固まっているとの診断。施術後ブックオフ 長泉店に寄り、昨日見送った二冊を購入。半藤一利『幕末史』新潮社2008年初版200円、門井慶喜『人形の部屋』創元推理文庫 2014年初版108円、計一割引277円。

 ネットの見聞。

《 ルーカス・クラナッハの絵を実際にみて印象的だったのは、肌の質感と淡く描かれた血管、そして、 聖母やヴィーナスが纏っているヴェール。透明で清浄なヴェールは薄絹というよりは柔らかい硝子質で、シャボン玉の被膜みたい。 あのヴェールは印刷や画像では再現することができない。 》 Fragment兎影館|柳川貴代
 https://twitter.com/Fantas_magorie/status/820489382809341953

 同感。印刷では凄さが全くわからなかった。

《 近所の本屋にはなかったので、春陽堂文庫の存在に気づいたのは、角川文庫の横溝正史新青年傑作選を読みだした後だった。 浜尾四郎『殺人鬼』、甲賀三郎『姿なき怪盗』、角田喜久雄『高木家の惨劇』などを大きな書店で発見してびっくりする。 》  藤原編集室
 https://twitter.com/fujiwara_ed/status/820503307193942016

 1970年頃、文庫は岩波、新潮、角川が幅を効かせ、続いて創元推理、旺文社ときてどんじりが春陽。その春陽文庫柴田錬三郎 『幽霊紳士』昭和47年4刷、佐賀潜『華やかな死体』昭和47年17刷、浜尾四郎『鉄鎖殺人事件』昭和47年23刷には検印紙が貼ってある。 『鉄鎖殺人事件』は二段組で昭和21年第1刷。すんげえ長持ちする紙型だ。ついでに他の作家の本を見る。園生義人『男装の女子高生』 昭和45年6刷は検印は印刷。若山三郎『お嬢さんの冒険』昭和46年14刷は検印は印刷。中野実『グッドナイト』昭和39年4刷は検印は印刷。 浜尾四郎『殺人鬼』昭和50年初版は検印は印刷に。作家によって検印紙貼付と印刷が混在していたが、昭和50年には印刷になったのだろう と思ったが、高木彬光『能面殺人事件(改訂版)』昭和50年9刷には検印紙貼付。昭和49年第1刷だが二段組。

《 豊洲新市場予定地の地下水からシアンやベンゼンが検出された事は重大だが、それで騒ぐ報道機関は、約400京ベクレルの 高濃度廃液が東海再処理施設で未処理のままでいる事は騒がないのだろうか? 地震津波に襲われたらどうなる。 「騒ぎ方」がリスクに比例していない。だから「マスゴミ」なのだ。 》 春橋哲史
 https://twitter.com/haruhasiSF/status/820766521139990528

 ネットの拾いもの。

《 しかし、ぼくがよく見ていた30年前に比べたら、女子駅伝の選手たち、可愛い子が増えました。以前は(以下、24文字抹消) だったから。静岡4区を走った宮田佳菜代さん(すぐ名前をメモ)は「おっ」と思うキレイな人。 》 岡崎武志
 http://d.hatena.ne.jp/okatake/20170116

 さすが、ユーチューバーは既に注目。目ざといねえ。

《 gmailで「AIと知財」という過去のファイルのやり取りを探そうとしたら、「もしかして:愛と知財?」と聞いて来た。 》  福井健策
 https://twitter.com/fukuikensaku/status/820778459018444800