ガイドブックではありません

 とにかく散らない。美術館へ来る道道、往生際の悪いとぼけた桜が何本も。
 昨日話題にした鷲田小彌太の「ブックガイド」はマルクス主義を毛嫌いしている。丸山真男大塚久雄川島武宜、内田義彦について。
「上記の四人は、誰一人マルクス主義者を任じてはいなかったものの、明らかに『隠れマルキスト』です。」
 とあり、それが犯罪であるかのように書いている。犯罪的であると本人は思っているんだろう。
「内田さんや平田(清明=引用者・注)さんの理念的核心(イデオロギー)は否定されました。」
 誰がどのように否定したのか全く説明されていない。下手な紹介だ。
 昨夜本棚を整頓していてふと手が伸びたのが「未読王購書日記」本の雑誌社2003年。帯文から。
「本書は『読書録』や『書評集』や『ガイドブック』ではありません。」
 続いてとりわけ大きいゴシック体の三行。
「とにかく 俺は 読まないの!」
 茶木則雄の解説から。
「自分が買った本の自慢話を、内容に触れずにこれだけ面白く読ませる作者は、まずいない。」
 鷲田小彌太の「ブックガイド」より未読王の「ガイドブックではない」ほうが遙かに面白くてタメになる。この日記は2000年7月から2001年12月まで。六年後に読むと、当時の新刊が105円になっていて、その落差というか歳月の流れの早さよ。

 ブックオフ長泉店で二冊。松葉一清「東京現代建築ガイド」鹿島出版会1993年2刷、武田泰淳「わが子キリスト」講談社文芸文庫2005年初版、計210円。前者はA5判263頁で定価2800円、後者の文庫は224頁で1250円。新本ではまず買わない。前者の建築物は1963年の村野藤吾設計による日本生命日比谷ビルがあるけど、多くが1980年代90年代初頭のもの。この時代のトンデモ建築は凄かった。こんな建築ブームはもう二度と来ないだろう。それにしても摩訶不思議な建物群だ。
 1996年完成予想の東京国際フォーラムについて。
「巨大施設を十二分に運用するだけのソフトをどこまで供給しうるか。90年代日本の文化的体力を測るひとつの尺度となりそうだ。」