5月 5日(月) 休館日

 幸田露伴「連環記」を読んだ。
「一体女といふものほど太平の恩澤に狎されて増長するものは無く、又険しい世になれば、忽ち縮まつて小さくなる憐れなもので、少し面倒な時になると、江戸褄も糸瓜も有りはしない、モンペイはいてバケツ提げて、ヒョタコラ姿の気息(いき)ゼイゼイ、御いたはしの御風情やと云ひたい様になるのであるが、天日とこしえに麗しくして四海波穏やかなる時には、鬚眉(しゅび)の男子皆御前に平伏して御機嫌を取結ぶので、朽木形に几帳の前には十二一重の御めし、何やら知らぬびらしやらした御なりで端然(たんねん)としてゐたまふから、野郎共皆ウエーとなつて恐れ入り奉る。」
「ここになると小説を書く者などは、即ち浅はかな然し罪深いもので、そりゃこそ、時至れりとばかり筆を揮って、有ること無いこと、見て来たやうに出たらめを描くのである。と云って置いて、此以下少しばかり出たらめを描くが、それは全く出たらめであると思つていただきたい。」
 微笑を誘う軽みのある文章もあるが、幸田露伴の作品には男前の気息と並々ならぬ勢いがある。ぐいぐい読ませてしまう。たいした作家だ。どこか石川淳を連想させる。

 夜、ブックオフ函南店へ自転車で行くが、坊主。ボーズのスピーカーで音楽を聴く気にならん。