『四季花木圖屏風一雙』(閑人亭日録)

 大判の薄い美術本『美術聚英 第十册』審美書院 明治十四年十月十二日發行を開く。編輯兼發行者 審美書院代表者 田島志一。これが田島志一の審美書院で最後に手掛けた本のようだ。『緒方光琳筆四季花木圖屏風一雙』を鑑賞。簡明な解説。

《 草木花葉の美を象徴の中に収めて、虚實の間に理想を遊ばしめたる者、光琳を措いて何處にその第一手を求むべけむや。殊に本圖の如きは象徴美の極端に於いて最もその長を見るべき名蹟なりとす。 》

 左雙の左端部が彩色木版画で複製されている。その金地に浮かぶ黒色の上弦の月。月の左横に立つ、すっと伸びた、たらし込み技法の樹幹。なんという構図。じつに見事。お恐れ入りました、と言うしかない。一年あまり前に話題にしていた。
 https://k-bijutukan.hatenablog.com/entry/2023/03/25/200323
 出版当時は日本人が所蔵していた。ネットの検索では見当たらない。この名品もまた、海外へ流出したのだろうか。