晴天

 堀江敏幸「河岸忘日抄」新潮文庫2008年初版を読んでいる。フランスの水路に係留されている船を借りて住んでいる中年の日本人独身男性の静かな日常を淡々と描いた小説。

≪霧のなかで自分の視力はどこまで届くのだろうか、と彼は独語する。まったく届かなくても、かまいはしない。いま切実に欲しいと彼が念じているのは、闇の先を切り裂いてあたらしい光を浴びるような力ではなく、「ぼんやりと形にならないものを、不明瞭なまま見つづける力」なのだから。≫105頁

 坂部隆芳氏の絵画か。

≪ふたりの後年の演奏をも知っているだけに、才能や個性のみならず、成長と成熟のあらわれの不平等が彼には痛いほど身に沁みた。これからの半生、わが身に成長と成熟はあるだろうか。個性と呼びうるものが備わってくれるだろうか、と。 ≫114頁

 我が身を思う(憂う?)。

≪いまこの水に飛び込むのはよほど酔狂な連中か、深い絶望に陥った詩人くらいしかいはしないだろう。泳ぎを禁じられた水に身を沈めうるのは、死を覚悟した者たちだけなのだ。≫136頁

 昨日ふれた詩人ゲラシム・リュカはパリのセーヌ川に投身自殺した。

≪気温八度、湿度三二パーセント、南西の風、風力二、気圧一○一八ミリバール。≫177頁。

 きょうのような天候だ。

 ネットで拾ったネタ。

≪大体西日本の人からすれば栃木群馬茨城は

 どれも一緒に見えるらしいからな。

 関東で言う鳥取島根の区別がわからん感覚と一緒らしい。≫

 私は、どっちも区別ができない。ああ静岡県人。