休館日/妊娠小説・続き

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。岩瀬成子・文/味戸ケイコ・絵『月夜の誕生日』金の星社2004年初版、松浦寿輝川の光中央公論新社2007年4刷、柳広司『キング & クイーン』講談社12010年初版帯付、計315円。

 晴天で暖かいので、お昼前から満開の桜見物にあちこち巡る。

 斎藤美奈子『妊娠小説』ちくま文庫、続き。

《 出会い→初性交→妊娠=受胎告知→中絶→別れ

  以上五ポイントは「妊娠小説の五大イベント」といってもよく、それぞれが小説の読みどころ、山場となってそびえている。》「妊娠効果の基礎知識」

《 妊娠という事件をはさんだ男女の思惑は、必ずしも一致しないどころか必ず対立することになっている。たとえばの話、妊娠の片一方の主体であるはずの男にはほとんど出る幕がない。生まないでくれといえば「愛していない」証拠のように見え、生んでくれといえばいったで他人ごとだからそんなふうにいえるのだとも見え、しかたないから黙っているとまじめに考えていないように思われる。》「妊娠効果の基礎知識」

《 ここでの「妊娠」は自動物語推進装置である。ヒロインの胎内スイッチがオンに入るたびに、なにかがおこる。》「ゲームの展開」

《 スパイスというものは、それ欲しさに国家財産をごっそりつぎこんだ国もあれば、そのとばっちりで植民地にされてしまった大陸まであるほどの重要な素材だ。それほどの素材であったのに、スパイスだけをむさぼり食う人はまずいないのである。》「妊娠濃度による分類」

《 出だしに仕掛けて気をひいたり、終幕まぎわでぶちかましてみたり、少しだけふりかけたり、ドカンとてんこ盛りにしたり、妊娠とハサミは使いよう。》「妊娠濃度による分類」

《 なにも妊娠には限らないだろう。「のっぴきならない状況」がふってわいたら、「変革」か「現状維持」か以外にとれる道があるはずがない。そしてもちろん、なかには、判断が停止して、<心にもないこと>を口走るオタンコナスもいるわけである。》「愛と幻想の選択」

 原発災害の現状だ。

《 ちっぽけな知性(ひにん)ごときにわずらわされず、予測できる後の困難(にんしん)をものともせず、ベッドの荒波へと乗り出してゆくこと、それはまさに現代の冒険であり、魂の苦闘を求めて旅立つ彼らこそ、現代のヒーローと呼ばれるにふさわしいのではないか。》「避妊をめぐる冒険」

 金井景子の解説によると、『文学はこんなふうに読むものじゃない』と元編集者に斎藤美奈子はしかられたとか。そんな馬鹿は今世紀にも生き残っていそうだ。

 山田五郎『百万人のお尻学』講談社+α文庫を連想。