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 白砂勝敏さんが京都の星野画廊で購入した星野桂三『石を磨く 美術史に隠れた珠玉』産経新聞社2004年初版を借りて読んだ。産経新聞大阪版の連載をまとめたもの。有名無名(大多数が無名に近い)九十名あまりの絵が見開き二ページで紹介されている。絵画への愛着がひしひしと感じられる好著。だからこそ、眼は自分にも厳しい。長谷川利行の項。

《 数年前、佐伯祐三の大量の作品が発見されたことが報道され、その贋作問題が世間を騒がせた。経験豊富な画商にとって、あのように下手くそな油絵が佐伯のような天才的な画家の作でないことは簡単明瞭な事実。なのに新発見を信じる美術専門家が何人もいたようだ。 》

《 私が買った利行作品の真作率は、ようやく三割バッターのレベル。プロ野球とは違い、この世界ではとても自慢できるものではない。 》

 東郷青児の項から。

《 バブル崩壊後の現在でも、マーケットには、誰が描いたのか分からない東郷青児作品と称する物が氾濫している。そうした作品が彼の真価を貶めている。 》

《 訳の分からない哀しいことがもうひとつ。川原町三条の朝日会館にある東郷青児大壁画〈平和と団結〉(一九五二年完成)は長い間、地域のシンボルとして親しまれてきたが、あまりにもあっけなく解体されてしまったことだ。 》

 公共建築物における壁画が、これからどこも解体の危機に遭うだろう。解体工事の情報があまりに乏しい。

 加藤静児の項から。

《 この国では名前のランクによる絵の評価が主流だ。絵の最終的な購買者が、もっとしっかりした審美眼を養って、佳い絵とそうでない絵を選別する眼をもつようにならないと、不勉強な画商たちの話術に乗せられて、つまらない絵を買うはめにもなるのだが…。 》

 ネットの見聞。

《 なべて紙の出版はパッとしないし、すでに電子出版はポピュリズムに壟断されているし、第三極、なんてものは本の世界にはないし……ネ。  》 紀田順一郎

 ネットの拾いもの。

《 フレンチの修行をしている人が師匠に「マネをして同じレシピで作っているのですがどうしても先生の味が出せません」といったら静かに笑って味の素を見せた。 》

《 プリン・ア・ラ・ドーモ君 》