午前、自転車で回っていろいろ用事を片付ける。午後はクター。堀江敏幸『河岸忘日抄』新潮文庫を少し読んだ。
《 手軽で単純にみえる料理ほど奥は深い。オムレツは、その筆頭にあるもののひとつだ。ナイフを入れると汁がじわりと 沁みだしてくる半熟タイプであれ、具を入れて固めに火を通すタイプであれ、納得のいく焼き加減にするためには、一、二分の あいだ、全神経をフライパンのうえに集中し、自分がこの世に生まれてきたのはオムレツを焼くためだ、世界はふたりのために ではなくオムレツのためにあると言い聞かせなければならない。わずかな油断も禁物だし、なにより立派なオムレツが焼ける。 》 183頁
まさにその通り。料理人の腕を判断する時、私はプレーンオムレツを注文する。上記は一字書にも通じる。一字書といえば。 我が家の裏手にある墓地のコンパクトな墓の墓碑には、○○家ではなく漢字一字二字が刻まれている。順不同で。愛、和、今、心、 静寂、無想、宙、悠久、飛翔、夢などなど。へそ曲がりなら何の漢字にするだろう。愛ではなくAI、和ではなく輪、今ではなく居間、 心ではなく此処、静寂ではなく喧騒、無想ではなく夢想、宙ではなく空、悠久ではなく無窮、飛翔ではなく飛龍、夢ではなく幻。 なことはないな。私なら墓碑銘は、美。
そういえばキング・クリムゾンの『エピタフ epitaph』をザ・ピーナッツが歌っていた映像が You Tube から削除されていた。
《 料理を駄目にしたのはテフロン加工だ、と彼はつぶやく。テフロンが排除したオイルの濫用とこげつきこそ、じつは料理という 音のなかのノイズであり、ノイズがなければ味に深みが出ない。 》 193頁
我が家のフライパンは鉄製品。テフロン加工のものもあったが、とうの昔にお払い箱。
《 絶望と冷笑とはまったくちがうのだ、とショスタコーヴィチは説いていた。なにも信じていない人間が絶望に陥ることなど ありえない。冷笑するのは、ひとを信じることのできない、つまりは待つことのできない連中だけである。作曲家によって才能のない 人間の筆頭に挙げられていたあの国の指導者は、「待つこと」と「信念を持たないこと」を混同していた。理念も原則もなくひたすら 保身につとめるのは、目に見える真実だけを相手にしようとしていたからだろう。 》 204頁
でんでん首相のことかと思った。『ショスタコーヴィチの証言』中公文庫1986年初版、「五 わたしの交響曲は墓碑である」から。
《 わたしは思うのだが、作曲家にとってもっとも恐ろしいのは、信念を失うことである。音楽は、そもそも芸術は冷笑的(シニカル) なものであるはずがない。音楽がつらいものであったり、絶望的なものであったりするかもしれないが、冷笑的なものになるはずはない。 わが国では、冷笑的なものと絶望とを好んで混同している。たとえば、わたしは一度ならず冷笑的であるというレッテルを貼られた。 しかも、そのようなことを言ったのは官僚たちだけではなかった。イーゴリとかボリスとかいうわが国の音楽学者たちも、やはり そのようなレッテルをわたしに貼りつけたのだった。だが実際、絶望と冷笑的なもの、あるいは憂愁と冷笑的なものとは別物である。 人間が絶望に陥るのは、まだなにかを信じていることを意味する。 》 310頁
コンセプトとコンテンツ。似ているがまるで違う。
コンセプト: 概念。企画・広告などで、全体を貫く基本的な観点・考え方。
コンテンツ:(特に、電子的な手段で提供する)情報のなかみ。
他にはレッドラインとデッドライン。手打ちと御手討ち。
ネット、いろいろ。
《 月評第105回 「Death Line」展 死線(ボーダーライン) 》 椹木野衣 美術手帖
https://bijutsutecho.com/series/3848/
《 これは内緒だけど、ブルゾンちえみのネタはどこで笑えばいいのか、いまだにわからない。 》 太田忠司
https://twitter.com/tadashi_ohta/status/861493821179285504
いまだにブルゾンちえみがわからない。
《 サンドアート世界大会で日本人アーティストが優勝! 砂像「宮本武蔵」に「度肝抜かれた」の声続々 》 ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1705/08/news079.html
《 研究社版・新和英大辞典、なかなかやるな。「無理難題」の例文がこれ。『文部科学省がまた無理難題を言ってきた. The Ministry of Education and Science has made another impossible demand.』 》 中村美千彦
https://twitter.com/Nakamura_Mitch/status/861588613946933249
《 研究社の新和英大辞典を見たら、本当に「無理難題」の例文に「文部科学省がまた無理難題を言ってきた」と載っていました。 あと、「奇異」の例文に「文部科学省がそれを言うと奇異に響くが…」というのもありました。 》 Fumiaki Nishihara
https://twitter.com/f_nisihara/status/861735709987659776
《 新聞なんて、記事にしろ社説にしろ「書くだけ」だからな。 》 春橋哲史
https://twitter.com/haruhasiSF/status/861721706364141568