味戸ケイコ展 北一明展(閑人亭日録)

 味戸ケイコ展と北一明展は今のところ考えていないが、展覧会の題はいろいろ浮かんで悩ましく楽しい。今の候補。
  味戸ケイコ展「心の源郷へ」
  北一明展「異能の陶芸 異貌の陶彫」
 来年の六月半ばに近所の貸画廊で開催する「没後40年 つりたくにこ展」のキャチ・コピーは未定。「2024年、要請を受け、パリ・ポンピドゥー・センターの企画展で半年近く展示」という文言は使いたいが。

『日本のライト・ヴァース I』(閑人亭日録)

 本棚からやっと見つけた本、谷川俊太郎・編『日本のライト・ヴァース I 煖櫨棚上陳列品一覧』書肆山田(発行日の記載はなく、谷川俊太郎の「あとがき」に「一九八〇年十一月」)を再読。読みたかった天野忠「虫」をやっと読む。

《  虫

  病気が癒ってしまい
  すっきりした腹の上に
  新しい晒(さら)しをくるくると巻いて
  せったをはいて
  看護婦さんに仁義をきって
  あばよッ
  と出て行ったが
  裏門から入って来た霊柩車に
  轢かれて死んだ
  萬(よろず)幸多郎……

  押さえると
  直ぐ死ぬ虫のように
  彼は生きた。  》

 谷川俊太郎「あとがき」の書き出し。

《 東京の神楽坂に「軽い心」というキャバレかなんかがあって、近くを通るときいつもぼくは感心してそのネオン・サインを見上げるのだが、英米詩で言う<ライト・ヴァース>にうまい訳語のみつからないのは残念だ。<軽い詩>なんて言ってみても、どうもぴったりこない。 》 94頁

 昨日話題の東君平の詩もライト・ヴァースと言えそう。本の帯のキャッチ・コピー。

《 心と知性が指さきをからめポエジーのゆるやかな波間にたわむれる── 》

 詩人の藤富保男に「軽業師」ということばがあったな。小体な薄い堅牢本に相応しい。

 ネットの見聞
《 実は酔ってなかった「マタタビ反応」 ネコの生態を研究する岩手大農学部教授・宮崎雅雄さん<ブレークスルー 2024> 》 東京新聞
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/319770

東君平(閑人亭日録)

 東君平の私家版豆本『くんぺい ごしちご アフリカえほん』1981年9月 著者・発行者 東君平(縦85mm横90mm)を開く。91頁の本。一編四頁の構成。おしまいの一編、最初の一頁(86頁)は黒い地に白い字(切り絵)で「バオバヴの/かごにおもいで/つめきれず」。左頁(87頁)は白地に黒い切り絵。88-89頁は短文「バオバヴのかご」。その結び。

《 バオバヴのかごは くちが おおき
  くて なんでも たくさん はいり
  ますが たびのおもいでは おおす
  ぎて このかごには はいりきれま
  せん。

  バオバヴの かごにおもいで つめきれず  》

 東君平の本は画集をはじめ、何冊かもっているが、目の届く範囲には『白と黒の歌 二十一歳』サンリオ出版 初版・一九七五年五月十日がある。サイン本。右頁に詩。左頁に切り絵。

《  白と黒のうた

  ぼくのうた
  白と黒のうたは
  しろうとくろうの
  うたで
  素人苦労のうたと書きます 》

《  風

  風はみんなに吹く
  こんなあたり前のことが
  ついこのごろわかった
  うれしい 》

  東君平の詩、短文エッセイ等、気がつけばずいぶん愛読していた。どれも軽く読めるエッセイだが、ほろ苦い隠し味が効いている。軽く読めるため、意外と評価が軽いのかも知れない。深刻な文章は誰でも(!)書ける。明快、簡明な切り絵も、文章と同じく苦労を感じさせないゆえに、軽く思われているのかも。じつにセンスがよいのだが。
 私家版の豆本『くんぺい ごしちご アフリカえほん』は、新聞記事で知って注文した。もっと生きていてほしかった。記念館へ行きたくなった。
 https://kunpei.net/
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%90%9B%E5%B9%B3

芸術の慰撫(閑人亭日録)

 味戸ケイコさんの絵を身近で何気なく見つめているとき。北一明の茶盌(茶碗)を手にとり何気なく見つめているとき。なにかしら気持ちが落ち着き、じっと魅入っている。時の経つのを忘れている。ふと気づき、もっと見つめていたいと切に思う。無心であり、夢心のとき。夢心地から覚め、ふっと息をを吐く。世界は変わらず世界のまま。けれども、私の心は少しゆったりと穏やかに、晴れやかになっている。言葉にならないゆるやかな充足感に、しばらくして気づく。私だけの自足充足した時間。絵と茶盌という精神的固形物が私の心を平穏にし、和ませ、生気を少し補う。芸術の慰撫ということを思う・・・。生きねば。

 味戸ケイコさんの絵は、抒情画の世界を意図せずに深めた。
 北一明の茶盌(茶碗)は、陶芸世界に新たな美を創造した。

「わたくしは誰?」(閑人亭日録)

 青梅市歌人王紅花(筆名)さんから送られた個人誌『夏暦』五十八号の題は「わたくしは誰」。三十首ほどの作品に飛び抜けた一首が見つからなかったが、「わたくしは誰?」という結句が引っかかった。埴谷雄高の長編小説『死霊』のメインテ-マ「自同律の不快」を連想。哲学的に、ではなく「わたくしは誰?」と軽く自らに問いかけてみる。姓名? 職業? 住所? 思想? 何と答えるのだろう。
 今の私ならば、私の推す美術作品を後世に遺し伝える方策をあれこれ思案している一市民・・・かな。
 手紙を三通、葉書を一葉書き上げる。読めるかなあ・・・・きょうも暮れゆく。

 ネットの見聞。
《 「リニア」の遅れは静岡だけのせい? ほかの工区でも後ずれする工事、未解決の問題を考えた 》 東京新聞
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/319345

感想に頭を使う(閑人亭日録)

 個人短歌誌、業界紙連載記事、葉書等届いた文面に目を通す。さて、どんな感想を認めるか。いつも悩む。さらに困るのは、字がさらに下手になったこと。パソコンに入力すれば読みやすい字体が並ぶのは楽~だが、ここには プリンターが無い。一件はメールで感想を送ったが、他は手書き・・・か。ふう~。

 ネットの見聞。
《 【まとめ】小林製薬「紅麹」問題 自主回収の製品は? 菓子や味噌、調味料にも… 》 東京新聞
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/318171