芸術の慰撫(閑人亭日録)

 味戸ケイコさんの絵を身近で何気なく見つめているとき。北一明の茶盌(茶碗)を手にとり何気なく見つめているとき。なにかしら気持ちが落ち着き、じっと魅入っている。時の経つのを忘れている。ふと気づき、もっと見つめていたいと切に思う。無心であり、夢心のとき。夢心地から覚め、ふっと息をを吐く。世界は変わらず世界のまま。けれども、私の心は少しゆったりと穏やかに、晴れやかになっている。言葉にならないゆるやかな充足感に、しばらくして気づく。私だけの自足充足した時間。絵と茶盌という精神的固形物が私の心を平穏にし、和ませ、生気を少し補う。芸術の慰撫ということを思う・・・。生きねば。

 味戸ケイコさんの絵は、抒情画の世界を意図せずに深めた。
 北一明の茶盌(茶碗)は、陶芸世界に新たな美を創造した。