東君平(閑人亭日録)

 東君平の私家版豆本『くんぺい ごしちご アフリカえほん』1981年9月 著者・発行者 東君平(縦85mm横90mm)を開く。91頁の本。一編四頁の構成。おしまいの一編、最初の一頁(86頁)は黒い地に白い字(切り絵)で「バオバヴの/かごにおもいで/つめきれず」。左頁(87頁)は白地に黒い切り絵。88-89頁は短文「バオバヴのかご」。その結び。

《 バオバヴのかごは くちが おおき
  くて なんでも たくさん はいり
  ますが たびのおもいでは おおす
  ぎて このかごには はいりきれま
  せん。

  バオバヴの かごにおもいで つめきれず  》

 東君平の本は画集をはじめ、何冊かもっているが、目の届く範囲には『白と黒の歌 二十一歳』サンリオ出版 初版・一九七五年五月十日がある。サイン本。右頁に詩。左頁に切り絵。

《  白と黒のうた

  ぼくのうた
  白と黒のうたは
  しろうとくろうの
  うたで
  素人苦労のうたと書きます 》

《  風

  風はみんなに吹く
  こんなあたり前のことが
  ついこのごろわかった
  うれしい 》

  東君平の詩、短文エッセイ等、気がつけばずいぶん愛読していた。どれも軽く読めるエッセイだが、ほろ苦い隠し味が効いている。軽く読めるため、意外と評価が軽いのかも知れない。深刻な文章は誰でも(!)書ける。明快、簡明な切り絵も、文章と同じく苦労を感じさせないゆえに、軽く思われているのかも。じつにセンスがよいのだが。
 私家版の豆本『くんぺい ごしちご アフリカえほん』は、新聞記事で知って注文した。もっと生きていてほしかった。記念館へ行きたくなった。
 https://kunpei.net/
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%90%9B%E5%B9%B3