「渡邊白泉句集」(閑人亭日録)

 『富澤赤黄男  高屋窓秋  渡邊白泉集』朝日文庫 昭和60年5月20日 第1刷発行、収録「渡邊白泉句集」を読んだ。戦前戦中の作から私的に印象深い句をいくつか。

  熔岩は太古のごとく朝焼けぬ (西湖)
  緑蔭に潜水夫さへ走りたり
  ひとら去り日も去り谺樹に残る
  労働者低きところに笑ひたり
  銃後といふ不思議な町を丘で見た
  赤く青く黄いろく黒く戦死せり
  なきがらや軍と資本のはざま雪
  大盥(オスタップ)・ベンデル・三鬼・地獄(ヘル)・横団
  芋畑を三(サン)〇(マル)二(フタ)空基地と言ふ
  軍 艦 旗 掲 揚、 便 所・気 象 室
  監 視 艇 全 員 泥 酔 明 日 出 航
  戦 争 は う る さ し 煙 し 叫 び た し
  ハンモックに浸みたこの血が落ちるものか
  司令等の倉庫燃えをり心地よし
  司令戦死笑はぬ兵らなかりけり
  玉音を理解せし者前に出よ
  新しき猿又ほしや百日紅 (終戦