北耀変茶盌(閑人亭日録)

 いまだ恢復途上にある心身には読書は向かない。座卓に北一明の耀変茶盌を置いて鑑賞するのが心地よい。午前の陽光を受けて、轆轤成形の茶盌は、見込みの底、胴の緩やかに波打つ曲面に散る金星斑が星影のように浮かぶ。視点を少し移せば、漆黒面は突然光彩を発現する。息を呑み、ただ光彩陸離たる茶盌の変幻を心ゆくまで味わう。卓上、掌上の創造美。自己表現に費やされたヘンテコな焼き物彫刻の、いかに疲れることか。陶芸の伝統美を突き抜けた前人未到の耀変の美、別格の茶碗。そんな高い評価を当然として下したくなる北一明の陶芸術作品。しかし、比類なき作品ゆえに、凡百の自称陶芸家たちからは無視、黙殺される。生前も没後も陶芸界からは何の反応、反響もない。つりたくにこ同様、海外から評価されるのみ。縁故はびこる・・・。哀しいかな日本の美術界。