孤高の陶芸術家(閑人亭日録)

 午前、北一明の耀変茶碗を太陽光のもとで鑑賞する。玄妙な濃紺地が突然、光彩陸離たる耀きへ変幻。魅せられる。「曜変」茶碗の再現を試みている陶芸家は何人もいるようだが、北一明の「耀変」茶碗は、唯一無二だろう。最初の「耀変」焼成から半世紀ほどが経った。北に肩を並べる作家を私は知らない。独立独歩、陶芸業界とは無縁の、孤高の陶芸術家。彼の政治思想云々以前にまず陶芸作品をこそ正当に評価すべきだろう。それを前提に、デスマスク等の反戦反核思想を体現した陶芸作品を鑑賞すべきだろう、と思う。北自身、既成の陶芸作品に疑問を持ち、自ら焼成して実証実験をした。その過程で国宝曜変茶碗を実際に見てこんなものかと拍子抜けした、と私に語った。それから彼は「耀変」茶碗の焼成=創造へと向かった。
 二十年ほど北一明自薦の作品を購入した。依頼されて推薦文をいくつか書いた。原稿料などは無し。お礼の言葉だけ。
 http://web.thn.jp/kbi/kitashoron.htm
 2005年だったか、彼が百万円で買ってくれ、と送ってきた茶碗は、その値段では到底買うに値しないものと判断。送り返した。助手の女性が電話で怒鳴り込んできた。途中で電話を切った。縁が切れた