奥野淑子 佐竹邦子(閑人亭日録)

 奥野淑子(きよこ1978年~)さんの木口木版画が、美術界で話題になったり、美術雑誌の記事に取り上げられたりしたことを、グループ展の広告以外に私は知らない。某版画雑誌の編集長も知らなくて、五年ほど前、我が家で彼女の木版画をお見せしたら仰天。頼まれて電話を取り次いだ。彼女は現在休業中のようだが、思うにあの緻密極まりない、生命力あふれる流麗な曲線の彫りの魅力は、若き日の迸る情熱のなせる技だったのだろう、と思う。燃え尽きた・・・のではないか。さっき、たまたまオークションで見つけ、即決で落札。
 https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/o1131546618
 これは代表作ではないが、参考までに載せておく。編集長に見せた、彼女の代表作と思える作品の一つは、日本版画協会展に応募して落選した作品。某編集長曰く。版画協会展は、情実、縁故が云々・・・・。それを聞いて腑に落ちた。
 佐竹邦子さんが応募したリトグラフ作品を見に版画協会展へ行ったところ、彼女と同期の大学院卒業生の作品が版画協会賞を受賞していた。「え、これが?!」だった。師事していた版画家の先生のお目にかなったのだろう。佐竹さんは翌年受賞。現在多摩美術大学教授。
 「生動力と構造力 佐竹邦子作品への視点」
 http://web.thn.jp/kbi/satake3.htm
 奥野淑子さんは、金は無くても情熱だけは有り余るほど。制作(彫り)に没頭した日々が過ぎて結婚~子育ての過程に入り、木版画制作への意欲が失せていった、と思う。
 佐竹邦子さんは、教授になるという人生の目標に狙いを定め、着実に制作に励んだ。准教授、教授と地位を得て、ある意味上がり。制作者(クリエーター)から指導者へ。
 初個展、大学院卒業制作展で注目し、お二人の作品の目を瞠る深化と展開力を目の当たりにできた僥倖を実感するこのごろ。
 それにしても、奥野淑子さんの木口木版画の魅力になぜ、誰も気づかないのだろう。つりたくにこさんと同じか。