つりた くにこさんのマンガ(閑人亭日録)

 故つりたくにこさんのマンガは月刊誌『ガロ』青林堂で親しんでいた。カラッとしたナンセンス・ギャグに惹かれた。次第に不思議な生活が描かれはじめ、何だろう?と疑問が湧いた。それは問いはあるが、答えの出ないマンガ、と今にして思う。さり気なく深い哲学的問いとも言える。つりたさんは答えの出ない難問をマンガという表現で描いた・・・。問い掛け同様、登場人物の描写は半世紀を経ても古びていない。昨晩、友だちが見ていたテレビの音楽コンサートでの年若い歌手の髪形が、つりたさんのマンガに登場する人物にそっくりなことに驚いた。つりたさんの人物描写に古臭さを少しも感じないはずだ。他のマンガ家たちの描く人は、その過ぎた時代をいやっというほど感じさせる。時代の制約を軽々と超えている作品は、つりたさんのマンガくらいではないかな。
 アメリカから来日した研究者は、つりたさんのマンガをジェンダーの視点から研究していると聞く。

《 人間には生まれついての生物学的性別(セックス/sex)があります。 一方,社会通念や慣習の中には,社会によって作り上げられた,「男性像」,「女性像」があり,このような男性,女性の別を「社会的性別」(ジェンダー/gender)といいます。 》

 来年六月半ば、命日をはさんで近所の貸ギャラリーで「没後40年 つりた くにこ展」を開催する。
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