風吹き抜ける

 昨晩は風邪が抜けたので久しぶりにトマトソースを作る。トマトホール缶3個を使用。オリーブオイル、ニンニク、玉ねぎ、月桂樹の葉、胡椒などなど。まずまずの味。

 朝、沼津港にいる友だちから電話。港は風が凪いでいると言う。こちらは風が吹いている。気まぐれな春風。風を受けて白い辛夷の花がぱらぱらと散っている。

 来館者がふっと途切れた午後、安西均の詩を読む。「朝、電話が鳴る」冒頭一行。

  洗濯機にスイッチを入れるころ電話が鳴る

 この一行で世界に惹き込まれた。

  だけど電話の鳴らない朝は私は毀れた洗濯機だ
  自慢していい 私は働き者だから
  せっせと毎日 きのうを新しくする
  庭いっぱいお天気をひろげるのが好きだ

 円満な家庭の主婦の日常を晴れ晴れと描写。そして締めの三行で一気に反転。ネガフィルムが胸にぐっと迫る。

  あのひとは十日か二週目に街へつれ出し
  耳とか口とかところかまわず指を突っこんで
  私を裏返しにしてくれる。