2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧

霜月の落日(閑人亭日録)

十一月も末。十一月一日が七十四歳の誕生日なので、なんか感慨がある。塚本邦雄の短歌が浮かぶ。 ほほゑみに肖てはるかなれ霜月の火事の中なるピアノ一臺 この歌についてネットではいろいろな解釈が見られる。私にとってはどの解釈も論及も、どうでもいいも…

『パレスチナに光はあるか』(閑人亭日録)

画家の上條陽子さんから『パレスチナに光はあるか』と題するチラシが郵送されてきた。表面。 展覧会『上條陽子とGAZAの7人の画家と子どもたち』 会場:松本市美術館 市民ギャラリー 会期:12月19日(木)~22日(日) セミナー『戦争と闘う美術の力』 会…

『風に吹かれて』八(閑人亭日録)

『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社を読み進める。 「森と湖に囲まれた国」冒頭。《 フィンランドは、私にとって忘れ難い国である。 》280頁《 シベリウスを聞くたびに、私は強国に隣接した小国の悲劇性といったようなものを感ぜずにはい…

『風に吹かれて』七(閑人亭日録)

『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社を読み進める。 「百年よりも二十年」《 ところで今日は何を勉強したか。本日は、第五章、書籍について、というところをやった。 》257頁《 例えば、来客または目上の人に本を渡す場合、本のどちらを頭…

『風に吹かれて』六(閑人亭日録)

『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社を読み進める。「わが新宿青春譜」結び。《 だが、あの頃の女たちはみんなどこかへ消えてしまった。〈モン・ルポ〉のマダムの顔も、もう忘れかけている。憶えているのは、あの二丁目にかかる都電のレー…

『風に吹かれて』五(閑人亭日録)

『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社を読み進める。「わがダンス研究小史」。《 ところが、最近のGOGOになると、私は自分がすでに過去の時代に属する人間であることを感ぜずにはいられないのだ。 》183頁 GOGO。過去過去、だなあ。…

『風に吹かれて』四(閑人亭日録)

『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社を読み進める。「奇妙な酒場の物語」冒頭。《 どんな男でも、それぞれ自分の青年期を彩る、いくつかの酒場を持っているものだ。 》159頁《 こがね虫は 虫だ 金倉たてた 虫だ なぜ虫だ やっぱり虫だ 》16…

『風に吹かれて』三(閑人亭日録)

『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社を読み進める。「古い街の新しい朝」。《 何事によらず、調和とか、統一とかいった発想は、貧血の証拠であろう。昔ながらの土塀の間にはさまるブロック塀も、あれはあれで一種の対立感があって悪くない…

『風に吹かれて』二(閑人亭日録)

『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社を読み進める。「鮨とカメラと青年」。《 私はヨーロッパで、白人の婦人たちが黒人の青年たちと腕を組んで街を歩いている風景をしばしば見た。道路にはみ出したカフェで白人女たちは、黒人の胸に頬をす…

『風に吹かれて』(閑人亭日録)

読もうかな、と書斎の小卓の脚の間にずっとに立てかけたままになっていた『五木寛之エッセイ全集・第二巻─風に吹かれて』講談社 昭和五十四年十月十八日 第一刷発行を開いた。最初の一篇「赤線のニンフたち」を読み始めておっ、と注目。《 そのころ私は、池…

冬支度(閑人亭日録)

正午9.8℃。雨がしょぼしょぼ降る寒い一日。思い立って冬物を取りだす。半年あまり前に収納したけれど、こんなモノ、もっていたかな?という冬物が出てきて、買おうと思っていたので嬉しや、ボケたか~とぼやいたり。なんやかやと冬物を出し終え、コーヒーを…

ポンピドゥー・センターの図録(閑人亭日録)

昨夜胸騒ぎがして、故つりたくにこさんの夫、高橋直行氏に電話。元気な声が聞こえてきた。ほっ。ちょうどきょう、スペインの出版社から『つりたくにこ作品集』が届きました、と。スペインでは明日発売とか。嬉しい知らせだ。パリのポンピドゥー・センターで…

知覚の果てのその先(閑人亭日録)

北一明、味戸ケイコ、内野まゆみ、そして奥野淑子、白砂勝敏の五人に共通する特質。知覚の果てのその先への眼差しが、制作行為に影響を与えているのでは、と思う。その先への眼差しとは、なんとも奇妙な表現だが、今はそう書くしかない。手探りの先にある何…

様式 様式美(閑人亭日録)

朝、きょうが最終日の展覧会へ行く?と訊かれた。午後の用事の前に見に行くことはできる。友だちはスマホを寄こして、会場の写真を見せた。絵は、いかんなあ、ジャクソン・ポロックのものまね、亜流だ。行かないと答えた。会場で画家に感想を言えないわ。デ…

線描 描線(閑人亭日録)

線描と描線。どう違うのか。ネットで検索。 線描=線だけで、物の形を描き出すこと。また、その絵。 描線=かたちをえがいた線。 最も簡明な定義を引用した。なぜこの違いにこだわるのか。その昔、上條陽子さんの簡潔なデッサンに一目惚れして購入した。ネッ…

味戸ケイコさんからお手紙・続き(閑人亭日録)

昨日紹介した味戸ケイコさんからのお手紙の、絵についてのお考えに、あらためて深く同感。絵だけでなく、美術作品全般に通じることだと思う。作品を「見つめ心にとどめてくださる方たちによって完成する」は、至言だと思う。買い込んで死蔵するのではなく、…

味戸ケイコさんからお手紙(閑人亭日録)

味戸ケイコさんからお手紙が届く。北海道立函館美術館で開催中の味戸ケイコ展 https://artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp/hbj/exhibition/program/199に合わせて、北海道新聞の、四回にわたるインタビュー記事のコピーが同封されている。一回目の記事から。《 …

段ボールの中の本(閑人亭日録)

数日前、四十年を超えた網戸の交換と張替えを業者に依頼。三階の掃き出し窓の網戸は、上部が戸棚で、下は四十五センチほどの空間の先。その空間に本の詰まったダンボール箱がぎっしり詰まっていたので、後日に見ることに。今朝、時間が空いたから行きましょ…

腰掛ける台(閑人亭日録)

昨晩、靴を履くときに腰掛ける台を作って、と頼まれた。まず浮かんだのは、まな板ほどの大きさの板に、腰掛けるのにちょうどいい高さに切った縦板を付ける。簡単な作業だ。大きさが決まればオッケー。でも板をホームセンターに買いに行かねばならない。板だ…

地動説(閑人亭日録)

昨日の本を回想していて、地動説という言葉がふと浮かんだ。天動説から地動説への大転換。出版社の、半世紀ほど前の静かに漲る情熱が、装丁、造本からひしひしと伝わる本たち。その熱気は今もじつに熱い。と書くと、そんな時代もあったな、暑苦しいだけだろ…

過ぎし時を回想する秋の午後(閑人亭日録)

時折小雨の降る秋の昏い午後、午睡から目覚めてふと昔、若い頃の読書を回想。高校から大学にかけてその一部。 『異端の肖像』澁澤龍彦 桃源社 昭和四十二年五月十日発行 『万延元年のフットボール』大江健三郎 講談社 昭和四十二年九月十二日発行 『神州纐纈…

時の過ぎ行く秋の時(閑人亭日録)

鮮やかな秋の朝の光。透明な、澄み切った空気を突き抜けて目に届く眩しいひかり。眼が悪いのかな、と思ってしまう。目薬は朝、両眼に点滴しているが。ま、錯覚、思い過ごしだろう。 眼科の女医さんの言うことをきいていればよい。まあ、秋を実感する朝だ。少…

『流れ酔い唄』(閑人亭日録)

慌ただしかった一日が夕暮れを迎え、やっと一息つき、ふっと山崎ハコの歌声を無性に聴きたくなった。黄昏の空を眺めていて、A面二曲目の「罪」がふと浮かかんだ。 LPレコード棚から『流れ酔い唄』キャニオン・レコード1978年を抜き出す。これを聴くのは今…

孤独な思考と試行(閑人亭日録)

1997年6月1日、K美術館を開館。味戸ケイコさんと北一明の作品の常設展示館。それだけでは話題が乏しいので、いろいろな企画展を試行した。 2000年、ネット検索では、木版画絵師・小原古邨は、たった18件。現在、約375,000件。2002年、「小原古邨と周辺展」…

寝ぼけとボケ(閑人亭日録)

内野まゆみ展の疲れが今頃出てきたよう。寝ぼけるわ、買いものから帰宅して狼狽するわ。紅茶を買うはずだったが、コーヒーの棚の包装の日付を見て、きょうは見送り~。紅茶を買うのをすっかり忘れた。へえ~、こんなものも売ってるんだ、と試しに買ったパン…

「重ねと響き」(閑人亭日録)

一昨日の椹木野衣(さわらぎ・のい)氏もそうだが、白い長机を□の形に並べて配された千個の小さな立体作品をみなさん、何周もされて迷い迷い、一箱に収める四個を選ばれる。これほどに迷われるとは。傍から見ていて可笑しくてかわいらしくて、内野さんと二人…

「古人の忘れもの」展五日目最終日(閑人亭日録)

白砂勝敏さんたちが来廊。賑やかに盛り上がる。椹木野衣氏が昨日来たことを知り、会いたかったと残念がる人たち。最後に来たご婦人は、娘さんが大学で椹木氏の授業を受けている、と仰る。(こんなところに来たとは、と)驚いて娘さんに電話するも繋がらず。…

「古人の忘れもの」展四日目(閑人亭日録) 

展示時間と同じ、午前十一時から午後四時まで、ここは歩行者天国。賑やかな正午、内野まゆみ個展「古人(いにしえびと)の忘れもの」展会場へ、多摩美術大学教授、現代美術評論家の椹木野衣(さわらぎ・のい)氏が来廊。我が家の隣の料亭登喜和で昼食。我が…

「古人の忘れもの」展三日目(閑人亭日録)

午前七時。すっきり目覚め。紅茶を淹れる。どんより厚い曇からまた降り出す。雨脚が強くなる。 午後、降ったり止んだりの雨のなか、ポツポツと来客。接客(疲れる~)。閉廊時間を遅らせる。いろいろ楽しんでくれたからいいか。くたくた、だけど満足。

「古人の忘れもの」展二日目(閑人亭日録)

74歳の誕生日。ここまで生きるとは。晴天。これからは余生…か。ま、それは先送り~。 「古人の忘れもの」展二日目、静かに閉廊。昨日同様、ほとんどが女性客。皆さん、熱心に小さな作品に向かい合っている。そして選ぶのに、楽しく迷っている。終わってみれ…