春分の日/福島泰樹

 昨夜、思い立って台所の換気扇をお掃除する。油汚れがマジックリンできれいに流れていく。楽チン。風邪をひいているときには本を読む意欲が減退、音楽を聴く気分も失せていた。快復するとその気になる。音楽カセットテープの棚に短歌の福島泰樹の音楽テープを見つける。「六月の雨 福島泰樹短歌絶叫コンサート I 」天耳社1986年刊行。1985年ライヴ録音のAB両面を聴き通す。挫折し深い傷を負った心情が、凍りついた闇を熱く切り裂いて突き出てくるよう。室内に響きわたる自己表出と自己表現のぎりぎりの分水嶺を一刻一刻登りつめてゆく。息詰まる時空間。その切り裂かれた漆黒の向こう側もまた輝ける深い闇。けれども、聴き終えた後には自分がちょっと変わったように感じられる。

  ここよりは先へゆけないぼくのため左折してゆけ省線電車

 「左折」を「挫折」と違えて歌う福島泰樹。それもあり、だ。

 夜降った雨は朝には止むが、昼前は小雨がぱらぱら。で、このカセットテープを白砂勝敏氏に聴かせるとえらく気に入ってくれる。聴きながらだと仕事が進むと言う。それは嬉しい。藤圭子三上寛山崎ハコらの根暗絶唱連山に連なる福島短歌絶叫山。二十一世紀、その後が出ない。おーい、出てこい。