展示絵画に名前を付ける。いい展示だ。
有栖川有栖『有栖の乱読』メディアファクトリー1998年初版、第二部「有栖が語るミステリ100」の97番に荒巻義雄『エッシャー宇宙の殺人』。
《 この作品の舞台は、架空の港町カストロバルバです。カストロバルバは、エッシャーの絵をモチーフに造られた町で、幻想的な雰囲気に包まれています。 》
《 エッシャーが描く幻想的な絵画の世界に本格ミステリを重ね合わせると、こんなにも面白く気持ちのよい小説が出来上がる。幾何学が生んだ幻想が、ミステリと溶け合ったからでしょう。 》
『エッシャー宇宙の殺人』中公文庫1986年初版を興味深く読んだ。これは私好みだ。
《 『エッシャー宇宙の殺人』の世界は集合的な夢の世界であり、そこではエッシャーの絵にあるような奇怪な建築物が三次元的に存在している。物語は、この異様な世界に入りこんだ「夢探偵」の万治陀羅男(もちろん曼陀羅から採られた名前である)が、「物見の塔」、「無窮の滝」、「版画画廊」、「球形住宅」というエッシャーの絵にあるのと同じ四つの舞台で、次々に起こる殺人事件を解決していくという構成になっている。 》 笠井潔「解説」より
《 街の科学者たちは"夢の化合"などと呼んでいるらしいが、カストロバルバは元々、この街の外部の者たちがみた夢が投影されてできたものであるばかりか、さらに街の人々が夢の投影を重ねているいわば複合夢の世界なのだ。 》 「版画画廊の殺人」より
《 街全体が爛熟を極めた午後三時、さながらサルバドル・ダリの描き出す超現実的世界のように、時間と共に事物も流されていくようだ。 》 「球形住宅の殺人」より
残暑きびしいきょうそっくりだ。
《 陀羅男は熱心に耳を傾けながら、どうやら自分は単に事件の解決を求めることにこだわって犯人探しをする探偵ではなかったのだと思いはじめた。すなわち、自分にとって必要なのは、真犯人を探し出すことよりも、むしろ事件のより深い解釈だったのだ。 》 「物見の塔の殺人」より
事件のより深い解釈。ここに私は深く惹かれる。『M・C・エッシャー展図録』西武美術館1976年を傍らに大いに愉しんだ。笠井潔の、安部公房と倉橋由美子を引き合いにした解説も読ませる。
銀座のギャラリー椿のオークションに268番、安藤信哉の油彩画『西郷隆盛』が出品されている。ひどく気になる。
ネットの拾いもの。
《 爪切りをする時、新聞紙を広げて、その上で行う。いろんな写真が目に入る。
社会面だと、どうも居心地よろしくない。
結論。爪切りは、経済面に限る。 》