「パラダイムシフト──2100年への思考実験」

 毎日新聞28日夕刊、「パラダイムシフト──2100年への思考実験」は「第2部 脱『成長』への道 6」、水野和夫「資本主義の『過剰』性、是正を」。

《 5000年の「金利の歴史」において、現在、日本の10年国債利回り前人未到の超低金利にある。 》

《 期間、水準(価格)ともに世界記録を更新中である。 》

《 超低金利(すなわち低利潤率)に直面して、英米と独仏は表面上異なる対応をとったが、「蒐集」(コレクション)という点で本質的に同じだ。英米量的緩和により貨幣を、独仏はユーロを通じて土地を蒐集した。 》

《 「蒐集」は必ず「過剰・飽満・過多」になる。 》

《 現在起きているゼロインフレ・ゼロ成長・ゼロ金利は資本主義の「過剰」性を是正するプロセスなのである。「過剰」性とグローバリゼーションから脱却しないとポスト近代がみえてこない。 》

《 それなのに現実は異次元の量的緩和や「成長戦略」でそれを壊そうとしている。 》

 我が家の本も「過剰・飽満・過多」になりそう。

 フランスの哲学者の「語録」を途中で放擲。訳文がこちらの読書リズムに合わない。当初は吉田健一みたいな文体だなあと我慢していたが、訳文のせいではと思い、中断。翻訳ではこういうことがままある。ニーチェツァラトゥストラ』も訳文に手こずった。別の訳だったらもう少し楽に読めた気がする。以前読んだゲーテファウスト』は、別の人の訳で再読するつもりだ。澁澤龍彦が彼の翻訳した本を誰かから「フランス語が上手ですね」と褒められたとき、「日本語が上手いんだ」と返した逸話があった。アンリ・ド・レニエ『水都幻談』平凡社ライブラリー、青柳瑞穂の古文調の翻訳は素晴らしい。

《 むしろ、わたしは文語体など不得意で、もとより、よくするところではないが、それを敢えて冒険したのは、レニエ自身の格調高い、時には誇張味さえある文章のためである。 》

 ここまで書いてネット検索すると、長谷川宏の新訳が光文社文庫で出ていることを知る。その放擲した本、中公クラシック『アラン』中央公論社2002年初版収録「芸術論集」桑原武夫の訳(『諸藝術の体系』の抄録)について、長谷川宏の一文が目に留まった。

《 桑原武夫訳『芸術論集』の改訂版『諸藝術の体系』を取りよせて 読んでみた。訳文がいかにも堅苦しい。 》

《 『諸芸術の体系』の訳文に限っては、原文に即(つ)きすぎた直訳調で、とてもすらすらとは読み進めない。 》

 やはりね。

 晴れたのでブックオフ沼津南店へ自転車で行く。麻耶雄嵩貴族探偵集英社2010年初版、小林恭二『俳句という遊び」岩波新書1991年初版、色川武大『離婚』文春文庫1983年初版、塚本邦雄『百句燦燦』講談社文芸文庫2009年3刷、諸橋轍次孔子老子・釈迦「三聖会談」』講談社学術文庫1989年13刷、計525円。『離婚』には「創業明治26年 浪月堂書店」のシールが貼ってあったから。函館にある店だ。元版の『離婚』文藝春秋には沼津の本屋の納品書が挟まっている。昭和五十三年十一月三十日の発売日よりも早い昭和53年11月27日付け。相手は学校の先生だ。

 体が動きたがっているので、午後はブックオフ函南店へ。山田正紀『マヂック・オペラ』早川書房2005年初版帯付、海野十三『太平洋魔城』少年倶楽部文庫1976年初版、奥泉光シューマンの指』講談社文庫2012年初版、鯨統一郎『幕末時そば伝』実業之日本社文庫2011年初版、J・H・ワトスン『シャーロック・ホームズ対オカルト怪人』河出文庫1996年初版、計525円。二軒で1050円。ああ、散財した。満足満足。

 高知県やなせたかし記念館から寄贈第二弾、十五冊の寄贈目録が届く。『詩とメルヘン』増刊号『やなせたかしの世界』1975年、1991年など。第三弾は来年以降。

 毎日新聞夕刊の記事で、藤あや子エアロスミスのファンだと知る。ということは、昨日の引用は、東川篤哉はそこまで知っていたということか。ふーむ。

 ネットの見聞。

《 「首相動静」程度の情報を「機密情報」扱いすべきだと考えている人が元防衛大臣で、与党の議員であるということを日本国民は肝に銘じておいたほうがよい。つまり秘密保護法案が通れば、「首相動静」程度の情報を漏らしたり探ろうとしただけで、禁固10年をくらう可能性も否定できないわけだ。 》 想田和弘

《 しかも秘密保護法案のもとで「首相動静」が秘密に指定されたとしても、それが秘密であるかどうかも開示されない。しかも未遂でも罪に問われるわけだから、首相が会った人を探ろうとしただけで逮捕・投獄されてしまう。裁判でも罪の内容は秘密なので開示されない恐れがある。滅茶苦茶だ。 》 想田和弘

《 秘密保護法案が通っても、もしあらゆる政治家が良識と良心を備えた完璧な人間であれば、本当に秘密にしなくてはならないものだけ秘密に指定するから大丈夫。だが問題は、古今東西を通じてそんな政治家は存在しないことだ。小池百合子氏みたいなのがゴロゴロしているのが現実。だから情報開示が必要。 》 想田和弘

《 ネットが無かったら、今頃日本のマスコミは「世界が称賛する安倍首相の指導力」とか「原発事故の的確な対応、世界が注目」とか翼賛記事を量産していたんだろうなあ。 》 藤岡真