「その灯を消すな」

 島田一男『その灯を消すな』春陽文庫1975年初版を読んだ。1957年の発表。一昨日の『上を見るな』につづく「刑事弁護士南郷次郎」シリーズ第二作。事件の舞台は福島県に近い栃木県北部の山間にある、平家の末裔を名乗る十三戸からなる部落。

《 七百年の夢に包まれた平家村蚊太(かぶと)の里は湯西川の上流。日本第二の水量を誇る五十里(いかり)ダムは下流。 》

 そこで起きる連続殺人事件。やや時代がかった軽いユーモアと転がる石のような軽快な筋運び。ついに暴かれる驚愕の真相と黒幕。急転直下のあっけない結末。エピローグなど無い。スッキリ、キッパリ。『上を見るな』も『その灯を消すな』も、暗転させれば横溝正史の愛憎ドロドロの世界になる。そうしなかったところが島田一男らしい。評価したい。物事を深刻に描くのは簡単。そこをユーモアで描いてしまうのは難しい。ミステリ愛好者には深刻な状況を深刻な描写で描いた作品を好む傾向があるようだ。と書いて、美術愛好家もそうじゃないか、と思い至った。それにしても、ここの温泉も訪問したくなるなあ。

 薄ら寒い曇天。体慣らしにブックオフ三島徳倉店へ自転車を走らせる。上遠野浩平『酸素は鏡に映らない』講談社2007年初版函付、矢作俊彦『ENGINE(邦題は引と敬の下に手)』新潮社2011年初版、ロジェ・カイヨワ『自然と美学』法政大学出版局1972年初版帯付、芳賀徹『蕪村の小さな世界』中公文庫1988年初版、アントニイ・バークリー『ジャンピング・ジェニイ』創元推理文庫2011年2刷、群像・編『12星座小説集』講談社文庫2013年初版、計630円也。
 ネット注文した古本、大室幹雄『新編・滑稽  古代中国の異人(ストレンジャー)たち』せりか書房1986年初版帯付、700円。

 ネットの見聞。

《 どうせ××も△△みたいにだめになるんだよね系の、自分では何も始められないくせに、他人がやることに斜に構えてわかったようなことを言う人間で何かを生み出した人を、わたしは52年間の人生で1人も知らない。 》 豊崎由美

《 言っていいことと悪いことがあるじゃないですか、とか
  そういう言い方って失礼じゃないですか、とか
  そういう言説を弄する奴はみんなアホ 》 池田清彦

 ネットの拾いもの。

《 囚人だけが参加できる、檻ンピック 》

《 あー、チョコ買いに行かないと……めんどくせえなあ。(女子力ゼロ) 》