『現代の美術 別巻 現代美術の思想』ニ(閑人亭日録)

 『art now 現代の美術  別巻 現代美術の思想 』高階秀爾中原佑介/編、講談社1972年5月20日第1刷発行を少し読む。高階秀爾「手さぐりする絵画」から。

《 このような「レアリスム」の観念が崩れ去ったところに、現代美術のひとつの主要な特質があることは、これまでにもしばしば説かれてきた通りである。 》 29頁下段

《 ニ○世紀の「現実離れ」は、ほぼ百年前に始まった印象主義の運動によって、その幕が切って落とされたのである。 》 29頁下段

《 その意味では、印象派の画家たちは、歴史の上で彼らと対立する存在とされるいわゆる「官学派」、すなわちアカデミックな伝統を保ち続けようとした当時のサロンの 画家たちと、同じ地盤の上に立っていたと言える。ただその現実を再現する手段において、印象派は官学派と決定的に違っていたのである。 》 30頁上段

《 「色彩分割」が印象主義の画家たちにとって決定的な意味を持った技法であることはたしかだとしても、それがサルトルの言う「絵画による現実の再現」から一歩 遠ざかったものあることは、ほとんど自明である。 》 30頁上段

《 モネのあの靄のようにすべてを覆い隠してしまう画法は、カンヴァスのみならず、「現実」そのものの姿をも色彩のヴェールに包みこんでしまったのである。
  しかし、ということは、裏から言えば、印象派の画家たちにとっては、「現実」がすでに信頼できる確固としたものではなくなってしまったことを物語っている。 》  30頁上段

《 すでに、ドラクロアボードレールとともに、絵画はそれまで何よりも重要な拠りどころであった「理想の美」の崩壊に立ち会っていた。(むろん、サロンの画家たちに おいては、この「理想の美」への信頼は、ドラクロアの死後も生き続けていた。しかし、それは歴史を作り出していくものではなかった。)それに代わって画家たちの目標 として登場してきたのが「現実」である。(引用者・略)少なくとも、西欧絵画の根となった古典主義の美学においては、「現実」は「理想」のもとに屈服せしめられて いた。(引用者・略)だが、「理想の美」の持つその権威がロマン派よって打ち破られると、「現実」は改めて画家の何よりも重要な拠りどころとしてクローズ・アップ されるようになってきた。一九世紀の絵画史において、ロマン派に続いて──しかもロマン派の中から──写実主義が生まれてくるのは、ほとんど必然的なことだった のである。 》 31頁上段

《 このような「現実」尊重がその頂点に達したのが、印象主義であり、セザンヌがその印象主義から出てきたことは、あらゆる美術史の説く通りである。(引用者・略) 印象派の洗礼を受けたセザンヌは、クールベのように「現実」の存在を自明の前提として、それにすべてを賭けることができなかった。 》 31頁下段

《 なぜなら、セザンヌは「印象派のなかから、何か美術館の作品のように堅固で、永続的なものを作り出す」ことを目的としていたからである。 》 32頁上段

《 そして、セザンヌにとっては、それは「描く」ことによってしか成し得ないものであった。 》 32頁上段

《 少なくとも、「現実」に対する手がかりを失ったところから生まれてきたセザンヌの作品は、現代絵画の根本の問題をはっきりと予告していたと言わねばならない。 》  33頁上段

《 戦後の「抒情的」抽象は、一時「タシスム」という名で広く呼ばれたことからからも明らかな通り、「ターシュ」(しみ、色斑)を画面の主要な構成要素として利用して いる。(引用者・略)その「ターシュ」が自己を超えた別の世界へ見る者を導いていくからである。とすれば、アンフォルメルやアクション・ペインティングの画家たちは、 先輩のカンディンスキーモンドリアンの持っていたような「造形性」という拠りどころすら持たなくなってしまったということになる。彼らが「ジェスト」(動作)や 「アクション」(行為)など、制作における残された唯一の明証性にその拠りどころを求めるようになったのも、当然のことと言えるだろう。 》 34頁下段

《 「行為」ないしは「動作」が芸術の主体になった時から、絵画の歴史の上で大きな変化が起こった。すなわち、絵画は自己を支える実体としての「作品」を失ったので ある。 》 34頁下段

《 とすれば、絵画は何よりもまず、人間から切り離されてしまった現実を取り戻すために、どこに拠りどころを求めるかということをさがしに、最初から手さぐりで 出発しなければならないであろう。そしてそれは、おそらく、画家が周囲の世界とのかかわりあいにおいて自己の存在を確認するところにおいてのみ可能なことである。 現在では、画家が同時に批評家であることを要請されているように、絵画はほとんど形而上学の役目を負わされているのである。 》 36頁下段

 長くはない論文なのに、引用が長くなってしまった。最後の引用は結びの言葉。発表から半世紀。今もって有効と思う。

 朝、源兵衛川最下流部で茶碗のカケラ、ガラス片を拾う。作業中の午前8時の気温は29.0℃。蝉しぐれのここは木陰だが、日の当たる上流は・・・作業は手短かに。 重くなって終了。帰宅。汗ドバー。風呂へドボ~ン。ふう。

 ネット、うろうろ。

《 ついに直近7日間平均感染者数で国別世界ワースト1、です。岸田さん、いったい、いつまで「何もしない」のでしょう?😠 》 Koichi Kawakami, 川上浩一
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1551466365080715265

《 僕は、90年代不況の世代という意味でのロスジェネに属することを、1920年代を生きたロストジェネレーションに重ねたい気持ちがある。 》 千葉雅也
https://twitter.com/masayachiba/status/1551362588638052352

《 僕らの世代にとって、インターネット以前以後は、第二次大戦以前以後に相当する。僕個人はそう感じている。ますます今そう感じる。 》 千葉雅也
https://twitter.com/masayachiba/status/1551362874387632128

《 今や、ネット以前の世界とは、「戦前」である。 》 千葉雅也
https://twitter.com/masayachiba/status/1551363435241537536

《 20世紀末というベルエポックか。 》 千葉雅也
https://twitter.com/masayachiba/status/1551366536048549888

《 ▼統一教会の関連組織から、国会議員(事務所)に「取材があったら、知らなかったと答えてください」と連絡が行われている。 》 有田芳生
https://twitter.com/aritayoshifu/status/1551093188466982914

《 あーこれ、「自民党違憲トリオ」ってすればよかった

  安保法制の安倍
  学術会議任命拒否の菅
  国葬儀の岸田 》 buu
https://twitter.com/buu34/status/1551062176521424896

《 今回の事件で宗教右派と安倍周辺の政治家たちの関係性が洗われたとしても保守派が様々な形で主張し憲法にも盛り込もうとしてきた「家族主義」が大打撃を受けるとは 考えにくい。人は不安な時ほど馴染んだものにしがみつこうとする。政治は理性より既にそうした生理に訴えるものになっている。以上感想。 》 大野左紀子
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1551359213473243137