『美をひらく扉』三(閑人亭日録)

 大岡信『美をひらく扉』講談社一九九二年四月一日 第二刷を少し読んだ。「ギュスターヴ・モローとモロー美術館」。

《 ぞっとするほど清純な裸身を惜しげもなく淫らなシチュエーションの中に置いて、まなざしを遥かな時空に吸いとらせている女や男たち。モローの絵はいわば矛盾の塊りである。だが思えば、矛盾したもの同士の緊密で美しい一体化こそ、美というものの発生装置にほならなかった。 》 75頁

《 そのまなざしには、いわば狂おしい肉欲を一瞬にして冷凍させ、非現実世界への憧れに転じてしまったようなある虚無の輝きが宿っている。 》 78頁

 こんな文から、味戸ケイコさんの少女、女性のまなざしを連想する。まなざしの向うの世界はまったく違うのに。

 「ゴッホという問い」。

《 ゴッホの出現は、「絵画」あるいは「美術」を、単に絵具が一定の広さの布や板の上に塗られることによって生み出される、ある視覚的体験の美的享受という段階を一挙にとびこえ、一枚の画布がそのまま一人の人間の人格的現象として読まれるという新しい事態の出現を意味していた。 》 88-89頁

《 つまり、画面の装飾性と深く結びつく形での抽象絵画の問題がそこに生まれていたのであり、面白いことにゴッホの画面はそちらの観点から見てもきわめて示唆的な要素をもっていたのだった。極端に鋭敏な精神性をもった絵画と、一見それに対立するかに見える装飾性を濃厚にそなえた絵画と、この二種類の絵画概念が、ゴッホという画家の中で分かちがたく結ばれていた。
 これを美術史の術語でいえば、表現主義と抽象主義(そしてその双生児としての装飾性)とが、ゴッホの中で一体化していたということであり、それがたとえば二十世紀の画家パウル・クレーにおいても、形を変えながらしかし同じ形で継承されているのを私たちは見ることができる。 》 89頁

 「ゴーギャン──高貴なるものの現存」。彼の手紙。

《 これほどの苦しみを我慢するするのも、私は大芸術家だからなのだ。自分の道を追求するためにこうしてやっているので、さもなければ、私は自分を詐欺師だと思うだろうよ(中略)私は、自分が何を創造しているのか、なぜそれを創造しているのかということをずっと前から心得ている。私の芸術の中心は、私の脳髄の中にあるので、よそにはない 》 96頁

 北一明を連想。新橋のギャラリーで初めて北一明の陶芸作品を見、北の謦咳に接したが、詐欺師ではないだろうが、山師かも、と思った。結局それは間違いだった。

《 彼はゴッホのようには熱狂もできず、気が狂うこともなかったが、それだけ一層深く、孤独地獄の苦しみにも耐えねばならなかった。 》 97頁

 北一明は晩年、故郷飯田市へ帰り、そこで亡くなったようだが。と書かねばならぬほど、情報が入ってこない。
 http://web.thn.jp/kbi/ksina.htm
 http://web.thn.jp/kbi/kitaron.htm
 https://www.msc2009.org/series/023.PDF

 「道化を描くピカソ」。

《 そこでは、目に見えるものより、精神に見えるもののほうが重要なのである。ピカソやブラックは、ほんものそっくりの客観性ではなく、考えられた形態の、想像力の中で真実である別の客観性を、画面上の事物に対して与えようとし、その意図を革命的な形で実現したのである。 》 112頁

《 しかし、いずれにしても二十世紀の芸術は、一般的にいって、自伝的要素を多く含むものとならざるを得ない必然があった。というのも、絵画は特定の規範に照らして完成度を競うようなものではなくなり、それぞれの画家に固有の造形言語を通じて表現される彼の人生観や感動、生命力の、いっそう力強い表示であろうとしているからである。 》 114頁

《 自分に感じられるものの正当さのみを信じ続けたこの画家は、恋をする時もけっして自分を偽ったりはしなかった。 》 115頁

 ネット、うろうろ。

《 人間というより、生物一般は、なぜ生物なのか。産まれて生きて死ぬという時間幅を持つ存在がなぜ存在するのか。その間にはいろいろな苦労をすることになるが、苦労しなければいけない存在がなぜ存在するのか。 》 千葉雅也 Masaya Chiba
https://twitter.com/masayachiba/status/1653928444152131584

《 等質的に時空があって、そのなかにただの物質があれば、生物もある、というのは違うような気がする。生物の存在は、時間について「何か違うこと」を伴っているのではないか。時間はどこにでも同じようにあるのではなく。 》 千葉雅也 Masaya Chiba
  https://twitter.com/masayachiba/status/1653929732352901122

《 生物には視点がある。視点と生きた時間の有限性が結びついている。そのことと文学。 》 千葉雅也 Masaya Chiba
https://twitter.com/masayachiba/status/1653930125535367168

《 無茶苦茶だな。
  気に入らん!って人がいたのか?
  ↓
  吉田朗の作品に対して行われた著作権の侵害、無断改変された作品の公開等の問題について。 https://yukari-art.jp/jp/news-jp/36859/
  2020年に作品を設置後、作家の了解を得ないでラッピングし改変。
  そのことも作家に伝えず、問い合わせを受けて倉庫に移動し放置。 》 SDGs建築エコノミスト森山高至(漁協建築研究家) https://twitter.com/mori_arch_econo/status/1653537817149210625

《 岸田総理がガーナに約5億ドル(約687億円)を支援するんだってよ。もう日本は30年も所得が上がらなくて、国連から貧困国に認定されるほど貧しくなっている。子ども食堂が7000箇所以上に増えるほど飢餓が深刻化しているのに、先進国気取りでこんなことばかりしている。 》 まりなちゃん
https://twitter.com/t2PrW6hArJWQR5S/status/1653426527810523136

《 今、日本の政治家に求められていることはただ一つ「若者に金を与えろ!」これだけだ。消費税アップ? 防衛費増額? NHKをぶっ壊す? 何言ってんだバカ。 》 水原秀策
https://twitter.com/sicilian_/status/1654062134224093184?cxt=HHwWgIDQreuvtPQtAAAA

《 あくまで「任意」のマイナンバーカードで、所持していない市民に対する医療費割増や、そして事実上取得せざるを得ない状況に追い込む健康保険証廃止など、明らかな「ペナルティ」が横行している。通常「任意」であれば、意志を歪ませる不利益処分は許されない。こんなものは民主主義とは呼ばない。 》 異邦人
https://twitter.com/Narodovlastiye/status/1653648270831550464