里見龍樹『不穏な熱帯』九(閑人亭日録)


 里見龍樹『不穏な熱帯  人間〈以前〉と〈以後〉の人類学』河出書房新社二○二二年一一月三○日初版発行、「第六章 沈む島々」後半を読んだ。

《 「深みの縁、水路の縁に行けば生きた岩が見られる」という右の言葉にも見られるように、このサンゴ礁内での「浅瀬」と「深み」の区分は、「岩」に関するアシの認識や経験と密接に関連している。(引用者・略)
  このような語りは、「深み」で「生きた岩」が豊富に「育っている」というアシの認識が、単なる観念ではなく、カヌーでの移動や漁撈活動といった、この人々における日常的・実践的な海洋空間の経験に根差していることを示している。 》 370頁

《 注目すべきことに、このような移動の経験において、「深み」の「生きた岩」は、可視性と不可視性の境界線を行き来している。 》 370頁

《 アシが関わりを結び、その「海に住まうこと」を可能にしているのは、まさしくそのようにつねに成長し変化する「自然」なのだ。 その限りにおいて、アシの島々は決して、何もない海の中に「人工的」に造られたものではない。 》 384頁

《 そして、われわれはどこで、どのように住まうべきなのか?」という問いを投げかけ続ける。本書の第一部で指摘した「海に住まうこと」の揺らぎは、その点において、「自然」と関わることによってつねに変転し続け、「アイデンティティの識別不能地帯」に歩み入っていくアシの人々のあり方を表すものにほかならない。そしてそれこそが、本書で思考し、記述しようとした「民族誌の自然」(「はじめに」を参照)にほかならないのであるり、またここにおいてアシは、強い意味で、「人新世」や「『自然』の終わり」を生きるわれわれの同時代人として姿を現している。 》 388頁

 「おわりに」を読んだ。

《 そしてフィールドワークの結果として生み出される民族誌とは、まさしくそのような識別不能地帯、あるいは本書で言う「不穏な熱帯」の体験の産物に他ならない。そに意味において、実体として想定された「文化」や「社会」ではなく、「広義の自然」とそれとの関わりにおいて成長する識別不能生こそが、民族誌の対象にして可能性の条件にほかならない。おそらく、これまでも人類学とはつねにそうした営みであったが、一連の転回を経て、現在そのことはこれまで以上に明確になっている。 》 400頁

《 本書の冒頭では、フーコーを参照しつつ、そのような「自然」と、自己同一性を離れた識別不能地帯について書こうとする民族誌が、一つの「外の記述」とならざるをえないことを示唆した。民族誌記述を通して「歴史」や「自然」の概念を絶えず不安定化し、そうすることで更新していこうとする本書は、そのような「外の記述」の試みにほかならない。 》 401頁

 広義の美術、不穏な美術、美術史の揺さぶり、転回・・・。いろいろな発想が浮かぶ。
 里見龍樹『不穏な熱帯  人間〈以前〉と〈以後〉の人類学』、読了。


 昨日、裏の蓮馨寺さんから依頼され、友だちが制作した茶碗の切片と割れたお皿を板の上下に組み合わせたモノを収めたが、奥さんから説明書きを求められ、昨晩書き上げ、今朝(手書きの文の)コピーを取り、午後お寺へ持っていく。以下、その短い解説文。

    「陶工たちの夢」
   遠い昔、陶工たちは、茶碗やお皿に
   筆で絵付けをしていました。
   欠け、砕けた焼きものは、川へ
   捨てられました。
   源兵衛川に埋もれた茶碗の
   カケラを掬(すく)い、洗い上げて
   制作したものが、これです。
   古(いにしえ)の陶工たちの心意気と
   技(わざ)が、陶片から伝わってきます。
   陶工たちの夢の一片が見えてくる
   ようです。
              制作 内野まゆみ
               文 越沼正
              協力 平成建設

 ネット、うろうろ。

《 岸田首相はこんな表現が多い
  👇
  「適切な対応を考え続けなければならない」

  考え続けるだけだと具体的に何もしないだろう 》 西村 カリン (Karyn NISHIMURA)💙💛
https://twitter.com/karyn_nishi/status/1628355696033931265

《 岸田の考え、休むに似たり
  岸田の検討、休むに似たり
  岸田の議論、休むに似たり 》 buu
https://twitter.com/buu34/status/1628366598666072064

《 岸田のやる事、無駄ばかり💢 》 モリチャン
https://twitter.com/himeroco/status/1628368382671331329

《 ノーベル賞などの受賞者が、岸田政権の進める学術会議への介入法案に対して声明。
  「性急な法改正を再考し、学術会議との議論の場を重ねることを強く希望する」
  ノーベル賞受賞者が出るたびに、時の首相が電話しその声を聞いてきたはずだ。
  今度は無視するとでもいうのか。 》 山添 拓
https://twitter.com/pioneertaku84/status/1628387636053446656

《 「雇止めになった人のすぐ横で、更新された人たちが喜び合う」
  「それを目の当たりにするのが辛くやるせなくて涙が出てくる」
  「こんなことを続けるのは麻痺をしているとしか思えない」
  職場にこんな分断を持ち込んでいるのが非正規公務員という制度。あまりに残酷。
  そして、培われた経験は無になる。 》 弁護士 市橋耕太
https://twitter.com/nukonekocat/status/1627692226724888577