『月に吠える』三(閑人亭日録)

 萩原朔太郎 『月に吠える』を読了。再読は何十年ぶりか。いくつかの発見があった。若い時には気づかなかったこと。その一例。

《    孤独
   田舎の白っぽい道端で、
   つかれた馬のこころが、
   ひからびた日向(ひなた)の草をみつめている、
   ななめに、しのしのとほそくもえる、
   ふるへるさびしい草をみつめる。

   田舎のさびしい日向に立つて、
   おまへはなにを視てゐるのか、
   ふるへる、わたしの孤独のたましいよ。

   このほこりつぽい風景の顔に、
   うすく涙がながれてゐる。   》

 伊藤信吉の解説から。

《 この詩の用語や語法は、主題の孤独感を表現するために、いかにも微妙は働きをみせている。「ななめに、しのしのとほそくもえる/ふるへるさびしい草をみつめる」という繊細な語音と語感。ここにが濁音がない。「風景の顔に/うすく涙がながれてゐる」という悲哀の風貌。この感覚的表現は真似のできないものだ。 》

 うまく言い当てているわ。