萩原朔太郎 『月に吠える』を読了。再読は何十年ぶりか。いくつかの発見があった。若い時には気づかなかったこと。その一例。
《 孤独
田舎の白っぽい道端で、
つかれた馬のこころが、
ひからびた日向(ひなた)の草をみつめている、
ななめに、しのしのとほそくもえる、
ふるへるさびしい草をみつめる。
田舎のさびしい日向に立つて、
おまへはなにを視てゐるのか、
ふるへる、わたしの孤独のたましいよ。
このほこりつぽい風景の顔に、
うすく涙がながれてゐる。 》
伊藤信吉の解説から。
《 この詩の用語や語法は、主題の孤独感を表現するために、いかにも微妙は働きをみせている。「ななめに、しのしのとほそくもえる/ふるへるさびしい草をみつめる」という繊細な語音と語感。ここにが濁音がない。「風景の顔に/うすく涙がながれてゐる」という悲哀の風貌。この感覚的表現は真似のできないものだ。 》
うまく言い当てているわ。