連想・転用

 買った古本はしばらくの間は床に置いて表紙絵を楽しんでいる。とりとめなく並べてあるのだけれど、面白い組み合わせになる。ディクスン・カー「血に飢えた悪鬼」創元推理文庫の隣は七北数人「人肉嗜食」ちくま文庫我孫子武丸「たけまる文庫 謎の巻」集英社文庫の隣には「北村薫のミステリー館」新潮文庫といったふうに、なんか連想ゲームみたいに並んでいる。連想といえば、朝松健「宇宙からの性服者」ケイブンシャ文庫1992年を読んだのだけれど、パロディ満載でおかしかった。第二章「空飛ぶ淫乱、地球を攻撃す」という題はアメリカ映画「空飛ぶ円盤、地球を攻撃す」からきているし、円盤の出現する場面も映画を下敷きにしている。第五章「恥丘防衛軍」も邦画に出てきた「地球防衛軍」からだ。第二章には「バイキンマン型UFOだな」なんてアンパンマンの敵役に言及されたり、テレビ生放送の場面では「いきなりA川K也とM岡Kっ子のアップ」と、わかる人にはわかる往年の番組「11PM」の愛川欣也と松岡きっ子から大方にもわかる霊能者奇保恋子(きぼこいこ)、包茎大学理学部教授三日月規彦(みかづきのりひこ)、新宗教<オームの科学>教祖麻川隆晃大尊師睨下(今じゃあ使えないわ)など笑える。残念なのは表紙イラストが吾妻ひでおでないこと。これは吾妻ひでおでなくっちゃ。森青花「BH85」新潮社はエライ。これは吾妻ひでおのイラスト。吾妻ひでお「スクラップ学園 天真爛漫編」秋田書店もパロディ(?)が散見される。「妖精だってしちゃうもん」には電車のなかでオヤジに痴漢されたミャアちゃんが「こら」と振り返り、コートを羽織ったオヤジを見て「お なかなか 文学的な チカン」。これは大江健三郎「性的人間」のことだな。しかし、本が見つからない。確認できないわ。
 淑女から顰蹙を買うエロティック・ナンセンス・ギャグ漫画を私は好きで、吾妻ひでお谷岡ヤスジそれに山上たつひこがとりわけ好みだけど、山上たつひこでは「喜劇新思想大系」が一押し。手元には講談社+α文庫の上下ニ巻がある。登場人物の名前がじつにいい。逆向春助(さかむけはるすけ)、悶々時次郎、陰野与一、玉無啓三、池上筒彦、陰徳寺の館長さん、若尾志麻などなど。各章扉のイラストが凝っていて、泰西名画から浮世絵版画さらには現代美術までが元絵として使われている。「飢餓怪狂」の扉絵は吉村益信のオブジェ「豚:Pig lib」1971 年兵庫県立近代美術館蔵が使われている。この作品は「フランスの画家レイモン・サヴィニャックのポスターをもとに制作された」そうで、転用(パクリ?)が転用を生んでゆく。

 なんか息の詰まる拙文だなあ。昨日の毎日新聞夕刊、きょう公開の映画「犬神家の一族」評から。
金田一から捜査の手伝いを頼まれた那須ホテルの従業員役にふんした深田恭子が好演。見苦しい相続争いが展開する中で何とも言えない憩いになっている。」
 ウェブサイトでは女中になっている。新聞では女中と書けないんだな。・・・・観たい。