不思議な言葉

 昨日ブックオフ長泉店で二冊。嵐山光三郎「口笛の歌が聴こえる」新風社文庫2003年初版、パトリック・クェンティン「二人の妻をもつ男」創元推理文庫1969年6刷、計210円。
 静岡新聞土曜日夕刊広告に載る言葉「刀圭界」。刀圭とは医者の意味だそう。不思議な言葉。
 こんな用語→転換価格修正条項付新株予約権社債。不思議な言葉。

 自宅は三島市街地のど真ん中なので、昨夜は老若男女の呑んべえたちの賑やかな声を夜更けまで耳にしながら嵐山光三郎「口笛の歌が聴こえる」新風社文庫を読んだ。時代は1964年から1969年、舞台は新宿。血が騒いだ。この回想録小説の終わったところから私の東京生活(大学生)が始まった。新聞テレビ雑誌で望見していた新宿が活写されている。1969年春、新宿西口広場でその騒乱の残り香の塵埃を味わえたのは幸運だった。
 それはまあいいけど、時代考証は合っているんかなあ。「平凡社は無頼の館・・・」の章、
「月刊百科は、九十ページほどの雑誌だったが、三十万部を印刷していた。」
 にギモン。主人公は英介。巻末の年譜には1966年4月、
「英介、平凡社に入社、『月刊新知識』に配属となる」
 本文では月刊百科が、年譜では 月刊新知識になっている。いや、それはささいなこと、平凡社のPR誌は元々「国民百科」といって、創刊号は1962年10月号、そして1967年10月号から「月刊百科」に誌名が変更された。1966 年当時は国民百科だ。それに四十ページほどの雑誌だ。全然違う。断言できるのは、このPR誌、一号から九十九号(1970年12月号)まで全部持っているから。
 檀一雄の記述も「?」がつく。年譜では1966年8月、
「英介、『月刊太陽』の編集部へ異動」
「英介企画、檀一雄執筆の『当世綺風傳』連載開始━━第一回は長島茂雄
 「月刊太陽」1967年3月号には檀一雄「地方美術めぐり8 『甲州の古寺』」が掲載されている。8回目から逆算すると・・・。
  この単行本が出たのは1985年新潮社、新潮文庫が1988年。誰も言わなかったんだろうか。というよりかなり虚構が混じっているってことだ。
 それにしても当時の平凡社はすごかったんだな。

  平凡社には原始共産主義とめちゃくちゃ放蕩主義と、鷹揚日々是好日主義が入りまじっており、
 しかも、会社は儲かっていると言う摩訶不思議な現象があった。
  そういえば、ゴリラ大王は、
 「本を刷ってる気分じゃないぞ。わが社は札を刷ってるようなもんだ」