書評の芸

 日曜日の帰りにブックオフ長泉店に寄って105円棚から福田和也「闘う書評」新潮社2008年初版帯付などを買った。題名に興味を惹かれ、帯は以下の文なのでさっそく読んでみた。
「世の中ちかごろ、手ぬるい書評ばかりじゃありませんか?」
 どこが「闘う」のか素人にはよくわからなかった。リリ−・フランキー「東京タワー」扶桑社。
「連載中も掲載誌を引っ張りだしては読んでいたのですが、やはり本としての衝迫力は格別です。」
 と絶賛。未読の私は、これからも読む予定はない。興味ないんだな、これ。斎藤美奈子「趣味は読書。」ちくま文庫2007年でのこの書評。「鉄道員」「朗読者」「白い犬とワルツを」そして「東京タワー」それから「世界の中心で愛を叫ぶ」「いま、会いにゆきます」を列記して彼女は書く。
「これら大ベストセラーになった物語の共通点、それは、/最愛の女性がこの世にはもういないこと/である。」
「最初から泣きのモードに設定されているわけで、あとはスイッチをいれるだけ。/それとこれを一緒にするな、と『東京タワー』の作者はおっしゃるだろうし、読者も同じ思いだろう。でも、構造としてはそうなのである。/ただし『東京タワー』は、息子の側から亡き母を語る、この構図が圧倒的に古くて新しかった。」
 105円で買った福田和也「闘う書評」はまだ一月も経ってない六月二十日の発行。早く売ろう。

 暑い昼下がりブックオフ長泉店へ。何もなし。知人女性の探求本が105円に落ちていたのでメール送信。新刊書店では買うつもりの文庫本に帯が付いていないので見送り。この書店、帯をばんばん外しまくっている。もったいない。

 種村季弘氏の未亡人から電話。日曜日の毎日新聞に載った、種村氏が訳した本の評を郵送したお礼。病床で翻訳していたという。