白熱の空

 八月は未明の雨と曇天で始まった。きょうは内閣改造。この暑苦しい空模様みたいだ。雲の上は清々とした青空。青空に憧れる午前、昼を過ぎて青空に。テレビで観たという年配の男性が来館。ありがたいことに味戸さんの絵本三冊「あのこがみえる」「わたしのいもうと」「夜くる鳥」を買われていく。昨夕は、テレビで観ましたよ、とご近所のおばさんから声をかけられる。テレビ(有線放送のトーカイの番組だけど)の力をまざまざと感じる。新聞などの紙メディアは効果を期待できない、というのが私の経験知。

 有栖川有栖ほか「ミステリーアンソロジー 誘拐」角川文尾1998年を読む。八人の小説家による短編集。八人八様だが、本格、ハードボイルド、バカミスが、やっぱり私の好みだ。午後三時、バカミスの雄、霞流一「スイカの脅迫状」を読んでいると、こんなくだり。
「夏の陽射しは刃物のように突き刺さってくる。午後三時、白熱の空が目に痛い。」
 外に出る。実感。語り手は漢方医
「住職が死んだら、私は『坊主を仏にした男』などと呼ばれるかもしれないのだ。」
「『念仏は死にたてのホトケに限る』などと訳の分からないことを呟いているのが漏れ聞こえた。老化が既にトワイライトゾーンに入っているのかもしれない。主治医として憂鬱だ。」
 しばし暑さを忘れる面白さ。バカミス、バンザイ。

 ブックオフ長泉店で二冊。多木浩二中村雄二郎「終末への予感」平凡社1988年初版、世界文学全集25「チェーホフ集英社1974年初版、計210円。