秋の夕暮れ

  妻子無き身にもあはれは知られけり裏のボロ屋の秋の夕暮れ

 おバカな歌が口を出る。西行法師と藤原定家を勝手にいただいたもの。師走といっても、まだ晩秋の気配。

 ◎心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮  西行

  秋はこの法師すがたの夕かな  宗因

  鴫立て淋しきものを鴫をらば  其角

  いかものかは鴫立つ沢のスピノザーメン  郁乎

 ◎見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮  定家

  舟炙るとま屋の秋の夕かな  嵐雪

  菓子壷に花も紅葉もなかりけり口さびしさの秋の夕暮  読み人知らず

 ブックオフ長泉店で二冊。小沼丹「懐中時計」講談社文芸文庫1991年初版、中谷宇吉郎「雪」岩波文庫1994年初版、計210円。