三月が終わる

 悲惨な三月はきょうで終わる。明日から残酷な四月が始まる……のだろうか(文学的感傷)。今月後半は男性歌人の歌集を読み進める予定だったけど、言葉の虚しさに囚われて中断。そんな時、横尾忠則『ぼくは閃きを味方に生きてきた』光文社文庫を読んで心がずいぶん軽くなった。やさしい語り口で書かれた文章が、妙に心に沁みる。前世とか霊とか、ヘン!と思う言葉はあるけれども、言っていることにはフムフムそうだよなあ、と共感。

《美術界にだけ影響を与える美術をよしとしている風潮は、僕は間違っていると思う。》112頁

《僕は思想の代わりに直観を信じている。》117頁

 直感ではなく直観。いいねえ。ずいぶん前にも書いたけど、美術作品を鑑賞、評価するには「知識、経験そして直観」が必須。

 一昨日味戸ケイコさんから恵まれた東京新聞夕刊一か月分から連載小説の部分を切り取る。ついでに記事を読む。3月4日、中村英樹「彫刻家エル・アナツイのアフリカ展」から。

《二十一世紀に入ってすでに十年経つが、現代美術の本当の問題点は、なかなか見えてこない。既成の様式に対する反抗そのものを主な目的としてきた二十世紀欧米美術の流れが、生きるための美術の再生を難しくしている。》

《何でもなさそうだが、このマクロの視点とミクロの視点の交錯は、一定の距離を置いた動かない視点で向き合うことを原則としてきた西欧近代美術と、本質的に異なる。地球上の自分を宇宙から見ながら、私的な日常の実感にも迫るといった見方と重なる。》

《エル・アナツイは、一九四四年ガーナに生まれ、七五年以降ナイジェリア大学で彫刻を教えてきた。見える形を理念の象徴とする西洋美術に学びながらも、無数の手仕事の集積を通して見えない世界と交感するアフリカ固有の文化の大切さに目覚めた。》

《その根幹は、日本文化の深層にも通じ、日本美術の指標となる。》

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。早川良一郎『さみしいネコ』みすず書房2005年初版帯付、郄木彬光『検事霧島三郎』角川文庫1997年改版初版、計210円。前者が特に嬉しい。好きなエッセイストの不所持本。後者は旧版を持っているけど、改版で読みやすくなったので。

 ネットの拾いもの。

《 宝塚過激団 》

《 寸尺鷺 》