折りたたみ折りたたみ

 曇天の寒い朝

 照屋眞理子句集『やよ子猫』角川書店2012年12月25日刊を読んだ。気に入った句から。

   はるばると生(あ)れて月見るこの世かな

   切株の夢の梢に小鳥来る

   折りたたみ折りたたみ冬の中にゐる

   ひぐらしや余白のごとき刻を得て

   さくら貝その名のあはれ拾ひけり

   藤の花逢ひたきときは目を閉じて

   思ひ出に濡れてしづかな夏の雨

   闇ゆたか胸に狼棲みてより

 理智が時により目立つきらいがあるけれど、危ういところで情理のバランスがとれている。帯の自選十句とは、切株の、さくら貝、藤の花の三句が重なった。