半七捕物帳・続

 面白いものだ。昨夜さっそくご教示あり。岡本かの子「鮨」は、種村季弘『書物漫遊記』筑摩書房1979年初版の「大食のすすめ」にあった。これこれ。速行でお知らせくださった給水塔さんに感謝。

《 余談ですが、この岡本かの子の小説『鮨』は、
  大学入試センター試験のサンプル問題の素材に採用されたため、
  私も含めて、イヤというほど読まされた業界人が多数いるという、
  いわくつきの作品でした。 》

 「給水塔」氏には昨日話題の三浦老人のパロディがある。以下無断転載。

《 「今年は戌年ですが、何か犬に因んだやうな新年に相応しいお話はありませんか。」と、青年は訊く。
  「なに、戌年……。君たちなんぞも干支をいふのか。かうなるとどつちが若いか分らなくなるが、まあ好い。干支に因んだ犬ならばハガキ作成ソフトの中をさがして歩いた方が早手廻しだと云ひたいところだが、折角のお訊ねだから何か話しませう。」と老人は答へる。
  「ありがたうございます。ぜひ聴かせて下さい。」
  「どうで私の話だから昔のことだよ。その積りで聴いて貰はなけりやあならないが……。西暦でいふと2005年の暮れも押し迫つたころだ。例のごとく写真機をさげて赤羽のへんをうろうろしてゐるうちに、日が短い時分だからはや日が暮れかかつた。桐ヶ丘のアパートの給水塔の上の方にはまだ日が当つてゐたが、地面のあたりはもう薄暗くなつてきてゐて、あとどれくらゐも撮影できないと思ふと気がはやる。ファインダーの中のフレーミングばかりに気を取られてゐた。それで足許がお留守になつた。右足の靴が、ぐにゆつとしたものを踏みつけた。感触からすれば間違ひない。犬の糞だつたよ。」
  「おやおや、とんだ災難でしたね。それで、どうなさいましたか。」
  「どうもしやしない。公園の枯芝生に入り込んで、靴底をなすりつけただけさ。まあウンがつくと云ふ位だから、新年に相応しいおめでたいお話さね。」
  青年は、おめでたいのはそつちの頭だらう、とでも云ひたげな顔で、気の抜けた麦酒を呷つた。 》

 岡本綺堂『半七捕物帳・続』講談社大衆文学館文庫1997年初版を読んだ。作品解題から。

《 本文庫では先に北原亞以子編の『半七捕物帳』が刊行されており、そちらは「物語性を主とする大衆文学館の意に添える」(岡本経一解説)べく、昭和九年八月から「講談倶楽部」に連載がはじまった後期の作品から十篇を選んでいる。本書は便宜上、「(続)」となっているが、シリーズの第一作である「お文の魂」から、大正期に書かれた最後の半七の物語である「三つの声」まで、前期の作品から十三篇を選んだものである。 》

 こちらから先に読めばよかったのか。半七といえども気がつくめえ。確かに、物語性でいえば後期のほうがいい。

 きょうも花曇り小雨。井上陽水『桜三月散歩道』をソノ・シート(盤面に'72,DECEMBER と印刷)で聴く。作詞は長谷邦夫

《 ♪ 川のある町に行きたいと思っていたのさ〜 ♪ 》

 三島のことか。んなことはない。ブックオフ長泉店で二冊。樋口有介捨て猫という名前の猫』東京創元社2009年初版帯付、『谷川俊太郎の33の質問 続』ちくま文庫1993年初版、計210円。