昨日、井伏鱒二『珍品堂主人』を読んだのは、『現代』講談社1991年1月号2月号に前後篇で掲載された討論会 「近代日本の100冊を選ぶ」(伊東光晴、大岡信、丸谷才一、森毅、山崎正和)に選出されていたから。1878(明治11) 年の久米邦武・編『特命全権大使米欧回覧実記』から一年一冊を選び、1983(昭和58)年の京極純一『日本の政治』に 至る100冊で、1959(昭和34)年は井伏鱒二『珍品堂主人』。
《 丸谷 そうなんです。ところが、知識人が本当のことを書いて非常に立派な業績を上げることになったのは、 やはり昭和戦後だった。井伏鱒二、石川淳両氏の昭和十年代の作にもいいものはありますが、戦後の成熟した 『珍品堂主人』(80番)、『至福千年』(87番)がある以上、そっちが選ばれるわけですね。 》 (後編)218頁
『文藝春秋』2005年臨時増刊を元にした『文学全集を立ちあげる』文春文庫2010年初版は、丸谷才一、鹿島茂、 三浦雅士の鼎談で選出。丸谷才一が双方に顔を出している。十五年ほどの隔たりがある。丸谷才一の発言を拾ってみた。
《 「それから」はもちろん入る。 》 夏目漱石
《 「おかめ笹」と、「腕くらべ」、この二つはもう絶対に入る。 》 永井荷風
《 「痴人の愛」は入るでしょうね。」 谷崎潤一郎
《 「あらくれ」と「仮装人物」だろうなあ。 》 徳田秋声
《 あのね、僕は岡本綺堂の「半七捕物帳」を入れるのは賛成だよ。 》
《 吉川英治はやっぱり「鳴門秘帖」がいいと思う。 》
《 「パノラマ島奇譚」といった作品は、近代日本文学のなかには他にないからね。 》 江戸川乱歩
《 「中野重治詩集」と短篇小説をいくつか入れて、評論も入れれば十分でしょう。 》
《 「女体開顕」「生々流転」、これ、ほとんど一平が書いていると言われてるけれど……。 》 岡本かの子
《 骨董屋の話「珍品堂主人」を入れてください。 》 井伏鱒二
《 石川淳は、「至福千年」がメインに来るものだね。 》
《 でも、やっぱり「司馬遷 史記の世界」が圧倒的に立派だよね。 》 武田泰淳
《 「国盗り物語」がいいんじゃないかなあ。 》 司馬遼太郎
「近代日本の100冊」には「それから」「腕くらべ」「痴人の愛」「あらくれ」「半七捕物帳」「パノラマ島奇譚」 「中野重治詩集」「生々流転」「珍品堂主人」「至福千年」「司馬遷」「国盗り物語」などが入選。ま、 このあたりは常識として読んでおけ、か。「腕くらべ」「痴人の愛」「あらくれ」「中野重治詩集」「生々流転」「司馬遷」はいいが、「国盗り物語」、読む気がしないなあ。
曇り空で風があり、暑くないのでエアコンはお休み。郵便局で二歳弱の女児の額に蚊に刺された跡。源兵衛川で 水遊びしていて、と母親がおばあさんに話している。幼児も遊べる川、か。昼前、自転車でブックオフ長泉店へ。 『高村光太郎詩集』岩波版ほるぷ図書館文庫1975年初版、丸谷才一『双六で東海道』文春文庫2010年初版、計216円。 前者は詩集『道程』が「近代日本の100冊」で17番に選ばれていたから。
昼、友だちから写真メール。シニアのインコ向け飼料を、彼女の飼っているインコが夢中で食いついている。笑える。 五年ほど前、彼女は最も貧弱なヒナを選んで購入。育つかなあ、と心配だった。それにしても、シニアインコ向けの 飼料まであるとは。ビジネスチャンスはどこにもあるわ。
午後四時霧雨。
ネットの見聞。
《 ちょっと高い古書など買う時、考える。私の残りの人生、仮に20年としよう。今、〇〇を買えば残りの人生は 〇〇のある20年。その歳月はこの値段に値するか?と。そしてたいがいは買ってしまうのだ。 》 林由紀子
https://twitter.com/PsycheYukiko/status/749928928035287041
きょうも古本をネット注文してしまった。
《 テロに屈しない、というけれども、この「屈しない」というのが違うんじゃないだろうか。そんなこと言うなら、 ISは空爆に「屈しない」というだろうし…。まったく違うアプローチを考え得るくらいに頭脳が明晰な人が政府にも 国際機関にもたくさんいるはずなのに…。 》 安田登
https://twitter.com/eutonie/status/749878149303771136
ネットの拾いもの。
《 一票一揆。 》