『日本文学史』

 小西甚一『日本文学史講談社学術文庫1993年3刷を再読。小気味いい鮮やかな切り込み。

《 歌謡においても、自然に対する純粋な愛情がふかく浸透しており、自然そのものを客観的に 観察するといったような態度は、ほとんど発見できない。要するに、精神と自然とは、本来、 対立的存在ではなかったのである。 》 「第一章 古代」30-31頁

《 古今集時代の歌人たちが個性を喪失したというのは、わたくしどもから眺めての話であって、 かれらとしては、表現の新しみを求めるため、それぞれ工夫をこらしていたのである。 》  「第二章 中世第一期」51頁

《 しかし、個性的でない個人という変則的な在りかたが古今集時代に確立してしまい、 真の個人が自覚されなかったことは、近代の成立を十世紀ちかくもおくれさせる結果となっている。 》  「第二章 中世第一期」51頁

《 和歌は、拾遺集時代すなわち十世紀の末から十一世紀の初めにかけて、ひとつの頂点に達した といえる。 》 「第二章 中世第一期」60頁

 藤原公任、曽禰好忠、和泉式部の三歌人が評釈されている。

《 しかし、公任という人は、名高い学識のわりには、創作の天分が乏しかったようで、 かれの作品は、平淡よりも、むしろ平凡に陥った。それにも拘わらず、かれの歌壇的地位の高さは、 当時の人たちに平凡な歌風を権威あるものと思わせ、それが主流をなすにいたった。 》 61頁

《 もっとも、「勢いよく」といっても、現代人の眼から見れば、たいした勢いではないのだが、 平安中期の無風的歌壇にとっては、まことに不埒な態度に相違なかった。 》 62頁

《 彼女の表現意欲は、しばしば「時代の良識」を無視する。そこに、わたくしどもは、新鮮な個性を 感じるけれど、当時の歌壇にとっては、あまり感心できない傾向であったろう。 》 62頁

 現在の美術界に引きつけてみる。「平凡な歌風を権威あるものと思わせ」。いるいる。「不埒な態度」。 北一明も該当するか。「あまり感心できない傾向」。ろくでなし子か。

 そして十二世紀。源俊頼(しゅんらい)の和歌。

《 さきに曽禰好忠が試みて嘲笑されたような表現を、いっそう徹底させていった。それは、時には、 同時代の人たちにとってさえ難解であった。このような革新的作者が、一流歌人として待遇され、勅撰 『金葉和歌集』の撰者ともなったことは、なんといっても、時代の流れであろう。「既に存在する表現」 への不信がこの程度にまで認められたことは、時代の底流をなす批判精神から切り放して考えるわけに ゆくまい。 》 75-76頁

 椹木野衣アウトサイダー・アート入門』幻冬舎新書の出現。

 ブックオフ長泉店で四冊。大津透『日本古代史を学ぶ』岩波書店2009年初版帯付、辻邦生『私の二都 物語』中公文庫2000年初版、丸田祥三『鉄道廃墟』ちくま文庫2004年初版、丸谷才一『人形のBWH』 文春文庫2012年初版、計420円。
 丸田祥三『鉄道廃墟』の写真を眺めて一昨日の富士市の美術家との話を思い出した。富士市には 岳南鉄道は無論のこと、製紙工場の風貌がじつにいいと言うと、鉄道は夜景遺産になってよかったと言うが、 意外にも製紙工場は関心外だった。彫刻を手がけているのに。富士市を車で通るたびにコンクリート製の 歩道橋と工場の前では、停めてくれ、と言うのをぐっとこらえる。源兵衛川同様、地元民には身近過ぎて その魅力がわからないのかも。明日へつづく。

 ネットの見聞。

《 形のうえだけでは、幾千とある頭注本の同類にすぎない。しかし、見る者が見れば、 ある解釈がどれだけ前人未踏の卓見なのか、さらには、その背後にどれだけ巨大な資料の集積が 潜められているかまで、ありありと感得できる。こうした集積は、不明の箇所にぶつかってから 資料を捜しまわっても得られるわけでなく、役に立つかどうか不明の(大部分は役に立たずじまいだろう) 文献をくだらない雑書まで、ふだんから丹念にあさり、頭の天然コンピュータに入力しておく、 永年の難行苦行からだけ生まれる。このゆきかたでは、生涯の大部分を本よみに費やしながら、 研究成果として発表できるものがわりあい少なく、効率は低いのを常とする。 》 小西甚一
 http://kasamashoin.jp/2009/04/_pdf_1.html

 ネットの拾いもの。

《 いい古本業者とかけて、ドローン、と解く。そのココロは、カンテイにも伺います。 》

《 へぇ、フランス人は10着も服を持っているのか、さすが、フランス人、 と最初に私が思った反応は世間とずれていたようです。 》

《 【閲覧注意】ジャガイモを放置してたらモンスターになったw  》
 http://matome.naver.jp/odai/2143106646911433701?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter