『密航定期便』

 中薗英助『密航定期便』集英社文庫1988年初版を読んだ。元本は1963年刊。軍事クーデターで 韓国の政権に就いた朴正熙時代の1961年9月。昨日の結城昌治『ゴメスの名はゴメス』とほぼ 同じ頃。当時南ベトナムも韓国も反共独裁国家。韓国、対馬と北九州そして東京をを結ぶ 謀略戦を描いたスパイ・サスペンス小説。当時の緊迫した状況が活写されている。この線上に 韓国、北朝鮮による拉致、誘拐がある。伴野朗の解説から。

《 物語は、裏切り、不信、陰謀、そして意外な結末へと一気に盛り上がっていく。 私は一九六○年初頭に引き戻されるような錯覚に陥っていた。巨大な悪、国際政治の非情さが 見事に浮き彫りにされ、読み終わってからもどっしりと重いものが心の底に残っていた。 こういう物語を「読み甲斐がある」というのだろう。 》

 重いものというより嫌なもの、だな。中薗英助『闇のカーニバル スパイ・ミステリーへの招待』 双葉文庫1997年初版、新保博久の解説は十七頁に及ぶ詳細なもの。長編三部作が版元倒産で中絶。

《 大西巨人の『神聖喜劇』といった大長編小説の伝統をもつ光文社から、編集者だった種村季弘に 続編執筆を打診されたが、既刊分を再刊するに当って版権問題なども絡んで頓挫した。 》 308頁

 因縁を感じさせる書き方だ。雑誌『リテレール 1992年冬号』メタローグ収録、種村季弘「近作を 中心としたヴァイキング式、百冊の本」で大西巨人の論難に反撃している。

《 そこへたまたま大西巨人の『三位一体の神話』(光文社)の書評を書いたところ、ご当人から 反論というか、とにかく反応があった。 》

《 ただの反感であって、反論になっていない。以後、こっちも大西巨人を「論外に置く」。 》

 昼、愛知県西尾市から源兵衛川のホタルの現況を視察に来た四十人余を案内。楽しかったと言われる。 ほっ。一休みしてブックオフ長泉店へ自転車で行く。文庫本を五冊。嵐山光三郎『不良定年』ちくま文庫 2008年初帯付、霞流一『プラットホームに吠える』光文社文庫2009年初版、中沢正夫『ストレス「善玉」論』 岩波現代文庫2008年初版、道尾秀介『ノエル』2015年初版、三谷幸喜和田誠『これもまた別の話』 新潮文庫2010年初版、計540円。

 ネットの見聞。

《 『娘に日本と韓国の間、対馬海峡あたりで散骨してもらおうと思っています』 》  つかこうへい最期のメッセージ

《 世の中には自分と似た読書傾向の人はいる。しかし、まったく同じ読書体験をしている人はいない。 同じ本を読んでも同じ読み方をするわけではない。百人いれば百通りの読書生活がある。 》  荻原魚雷
 http://gyorai.blogspot.jp/2015/11/blog-post_19.html

 ネットの拾いもの。

《 本屋で『いい女はFMが9割』というAMラジオ派には看過できぬタイトルの本が山積みになっていて 「なぬッ」と近づいてみたら『いい女はドMが9割』だった。 》

《 ボジョレーヌーボーのコメントは、世界で最も信用できないワインコメントです。 》

《 大介護時代 》

《 随筆遺産 》