小栗虫太郎『青い鷺』教養文庫1976年初版を読んだ。これはまた面白い。新伝奇小説と 呼称したようだが、そのとおりだ。遺贈の言葉「青い鷺 ブルー・ヘロン」を巡る謎、 落語と講談と活劇を合わせたようなめまぐるしい展開に引っ張られる。テンコ盛りの冗談と 機知は、なんとも嬉しい。堪能。
《 あいつも、皮肉な点にかけては相当なもんだが、いや憎いよ。卓鈴(すず)や遺贈の文字を 使って、後代の闡明(せんめい)を待つと怒鳴ってやがる。聴きたけりゃ墓へ入(へ)えれ── と云うだろうが、あすこだけにゃ不便なことに、往復の切符がねえ。そこでおまえさん、 おおよその見当がつくだろうじゃないか。卓鈴も、遺贈の第一文字も、同じ青い鷺(ブルー・ ヘロン)……。 》 316頁
《 呆(あき)れたような車内の視線が、マラボーツへいっせいに注がれる。テニヲハの、 滅茶(めちゃ)雑多なするある口調ならばともかく、老外人の、口をついて出るのが、 獨酒(どぶろく)的日本語である。彼こそ、米化日本人(メリケン・ジャップ)、仏化日本人 (フランコ・ジャポネ)を例とすれば、まさに日化英人(ジャッポ・アングリック)ともいえる 奇人種である。 》 337頁
《 媚妖(びよう)の魔月岡匠子が、まさに覆衣(ヴェール)を落そうとする。 》 344頁
「媚妖の魔」。使いたくなる表現だ。
《 「呆れたねえ、今度も、よもやとは思ってたんだが、やっぱりきみかい。いっそきみは、 モデルなんかやめちまって博打打ちになりたまえ。きみという冒険溺愛者は、どんなものにも、 いちおうは賭博的快楽を要求する。しょっちゅう骰子(さいころ)を弄(いじ)りたがる。先天的な 博打打ちだ」 》 366頁
この発言のように、魅力的な女性が暗躍、活躍して、どこへ転がるか、どこへ終着するか、 目が離せない。いやあ、おもしろかった 。
自分でもわかる誤植がいくつか。第二刷以降と較べたくなる。『黒死館殺人事件』は、 第二刷では誤植などが訂正された。
《 第二刷覚書
山口雄也氏の徹底的な本文および記載事実の批判を主要資料とし、第一刷の誤謬を全面的に 訂正した。 》 『黒死館殺人事件』教養文庫1997年初版第21刷。
朝のうちにブックオフ長泉店へ自転車で行く。文庫本を三冊。大西巨人『神聖喜劇』第三巻 光文社文庫2002年初版帯付、同第五巻2002年初版、リチャード・マシスン『ある日どこかで』 創元推理文庫2002年初版、計324円。第一巻は文春文庫1982年初版を持っている。あと二冊か。
熱中症指数に注意、警戒、厳重警戒の上に危険があるのを知った。ここはきょう危険なり。
日が暮れた。これから沼津の花火大会へ自転車でちょいと行く。
全くなあ、ちょいと国会前に行くことができないもどかしさ。学生時代は「運動不足解消」 とデモに行ったが。
ネットの見聞。
《 結局、日本が誇れるものって憲法九条しかないんだな。これを失ったら、 ただのみっともない国になるだけだ。 》
ネットの拾いもの。
《 「儲美頭信健」とは何か?
「儲」は投資話・先物取引など
「美」は美容器具やエステ
「頭」は英会話や通信教育
「信」は新興宗教・霊感商法や自己啓発
「健」は健康食品や健康グッズなど
早い話が、いわゆる「コンプレックス産業」のことだ。 》