「幸福の七か条」

 昨日私が橋渡しをした具合になって、友だちが緑茶のパッケージ・デザインを某社長から依頼された。 彼女は仕事をこれ以上したくないのに、と電話でぼやいたので私は言った。デキル人に依頼は行くの。 デキルんだからそれは宿命。素質のない人がいくら努力してもできないんだから、と。まあ、納得した模様。 仕事をしたくても、依頼が来なくなる時が来る、と私は彼女によく言う。そんな話の余韻が収まらぬうちに、 水木しげるの「幸福の七か条」に出合った。

    「幸福の七か条」
   第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない
   第二条 しないではいられないことをし続けなさい
   第三条 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし
   第四条 好きの力を信じる
   第五条 才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ
   第六条 怠け者になりなさい
   第七条 目に見えない世界を信じる 

 第五条の後半「努力は人を裏切ると心得よ」にうなずく。そうなんだよなあ。彼女は書画に天賦の才があった。 彼女は努力しているつもりがなく、好きでせっせと書の練習をしていた。好きこそものの上手なれ、の典型例だ。 優れた先生とよい両親に恵まれた。幸運、というより強運だ。
 子どもの頃私はポピュラー音楽と絵画と推理小説を好んだ。今も。それらに関心のある人は、周囲には皆無だった。 わかってもらおうとも思わず、独りで勝手気ままに楽しんでいた。「幸福の七か条」の第三条だ。

《 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし 》

 周囲の無関心が私には幸いした、と今では思う。これも幸運の一つか。
 「目に見えない世界を信じる」。じつに意味深長だ。妖怪などに限定してはもったいない。視覚以外、第六感にも 敷衍したい。直感、霊感だ。まだ目に見えない芸術作品が頭に浮かんで、自分を凄いアーチストだと勘違いする、 幸福な人もけっこういる。

 水木しげるやなせたかし。対照的だ。どちらも大器晩成。ああ、私もそうありたいが、なにせ才がない。一般人は 一般人でいるべし。背伸びをすればコケル。これからは第六条だ。そういえば、憲法第九十九条。

《 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 》

 午後、知人の車で熱海のMOA美術館へ行く。招待券があるのでロハ。でなけりゃあ行かない。琳派尾形光琳尾形乾山そして酒井抱一の三人の作品がじつにいい。いやあ堪能。必見。明治〜昭和初期の木版画がまた見事。 小林清親、橋口五葉、鳥居言人そして幻の絵師小倉柳村の名作「湯嶋の景」。摺り、保存状態とも極上品揃い。釘付け。 金を払う価値あり。

 充実した気分で帰宅の途に。と、ケータイに電話。毎日新聞の飛び込み取材。水木しげるについて感想を聞きたい、と。 なんで?が先に立つ。午後四時帰宅してほどなく若い女性記者が来訪。急いで出した水木しげるの本を卓上に広げ、 一時間半ほどインタビューを受ける。五年前K美術館で催した水木しげるのマンガ展からのようだ。それにしても 師走初日から慌ただしい。

 ネットの見聞。

《 水木しげるは、子供の頃にろくに勉強しなかったので、小学校を出ても進学できる学校がなかった。 50人定員なのに受験者が51名しかいない学校があったので、これなら大丈夫だろうと受験してみたら、 彼はそのたった一人の不合格者になってしまった。 》
 http://www.ne.jp/asahi/kaze/kaze/mizuki.html

《  [水木しげるの多くの名言から]  》 坂井直樹のデザインの深読み
 http://sakainaoki.blogspot.jp/

《 追悼! 水木しげるが描いていたラバウルの戦争体験と慰安婦…「80人の兵隊を相手に…あれはやっぱり地獄だ」 》  LITERAX
 http://lite-ra.com/2015/11/post-1737.html

《 「ブランド」を外にもたずに、「ブランド」を自分自身にもっている人の存在が産業革命につながっていく。 》  西村真里子
 http://wired.jp/innovationinsights/post/analytics/w/quantum-design/?user=normal

《 大熊町双葉町浪江町 帰還困難区域の現状とは? 》 山本宗補の雑記帳
 http://asama888.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-5f2f.html

 ネットの拾いもの。

《 水木しげる「向こうではおそ松くんと、ブラックジャック放送してたヨ」 手塚治虫アッチョンブリケ赤塚不二夫「シェー」 水木しげるドラえもんサザエさんはまだ現役だ」 藤子・F・不二雄「しょうがないなのび太くんは」 長谷川町子「あらあら」 今あの世でこんな感…  》