『実在への殺到 Real Rush』三

 二日休んだ清水高志『実在への殺到 Real Rush』水声社2017年初版を少し読む。「第5章 幹 - 形而上学について」から。

《 「存在論的展開」( Ontological Turn )を遂げたといわれる現代の人類学は、ふたたび新たなモデルを準備しつつある。ヘーゲルマルクス主義とともに あった弁証法レヴィ・ストロースのもとで作りだされた構造主義の後にくる、第三の方法。その第三の理論が問題なのだ。 》 104-105頁

《 もともとジェイムズの発想には、後発の経験から先の経験へと遡行する視点があったにも関わらず、彼の議論は最終的には、過去から未来へ、 「複数の精神(予期)」から「一つのモノ」へ、という一方向に偏ったものになっている。こうした点にも西田は不満を持っていたと思われる。もともと 主客の中性的一元論であり、遡行的でもあった議論が、特定の側に振れたまま終わっているのである。それゆえ西田が試みるのは、実のところ、それを 逆の側から捉え返すことであり、純粋経験論を文字通りニュートラル化することである。西田はジェイムズとは逆に、後発の純粋経験の側に内在しつつ、 純粋経験論を再解釈する。──むろんそれが主客未分の経験であることを強調しつつ、むしろそれこそが「精神」であり「意識」である、と解釈するのだ。 先立つ複数の経験を合流させ、そこに新たな文脈を与え、顕在化する体験、それが後発の、現在の経験としての純粋経験だというのである。 》 120-121頁

 続く論述に目の覚めるような体験。スゲエわ。森有正の著作で「経験」に注目して以来やっと「経験」が構造的にぐいっと押し広げられた。

 いつもの時間に目覚める。ということは十時間寝た……。体の動きのままに洗濯・朝食・掃除。ガスだけは注意。
 昼前、昭和歌謡に興味をもっている女子大生にCDを四枚貸す。浅川マキ、山崎ハコのデビュー盤と青江三奈の邦楽洋楽のカバー曲集そして五輪真弓のベスト盤。 夕暮れ〜夜〜夜明け前の歌ばかりだ。昼間の歌は持っていたかなあ。
 午後、自転車で病院へ見舞いに行った帰り道にはブックオフ長泉店。休憩に寄る。文庫本を三冊。仁木悦子『二つの陰画』講談社文庫1987年9刷、加藤周一ほか 『日本文化のかくれた形(かた)』岩波現代文庫2011年5刷、アンドレ・ルロワ=グーラン『身ぶりと言葉』ちくま学芸文庫2012年初版帯付、計324円。 『身ぶりと言葉』への松岡正剛のすごい絶賛ぶり。

《 ということは、ぼくの言語観はソシュールチョムスキーによってではなく、また時枝誠記クリステヴァによってではなく、ルロワ=グーランによって 開眼させられたわけなのである。  》
 https://1000ya.isis.ne.jp/0381.html

 きょうもまたじつに美しい夕焼けの雲と青富士。なんという気品だろう。これは絵では描けない。無理。写真でも違うだろう。

 ネット、いろいろ。

《 日下三蔵さんは盛林堂書房で「うーん、ここでやめとけば××××円なんだが……」とおっしゃってましたが、最終的にその十倍古本買ってました。 》  北原尚彦
 https://twitter.com/naohikoKITAHARA/status/907941678069161984

 ブックオフへ行く熱意が失せてきてネットで古書を注文してしまう。ブックオフなら千円でお釣りがくるが、その十倍以上だからなあ。でも絵を買うよりも 遙かに安い(そいう問題じゃない気が)。

《 純粋に、独りで長く人の心に届くもの作れるのに、なんで他人と組んで一年後には誰も覚えてなさそうなもの作るのかよくわからない。 》 向井透史
 https://twitter.com/wamezo/status/907960947221790720

《 東電福島原発事故はまだ継続をしている。東電幹部の刑事裁判は東京地裁で始まった。事故原因や責任はこれから裁かれるのだ。 事故原因の究明はまだ途上だ。国会事故調の資料は公開さえされていない。規制委員会は柏崎・刈羽原発の再稼働を条件付きで認めた。 東電の責任追及はこれからなのに理解できない 》 福島みずほ
 https://twitter.com/mizuhofukushima/status/908096059632582656

《 iPhoneの顔認証でロック解除のニュースを見て、奥さんがつぶやいた一言。 「ふーん、寝顔でロック解除できるんだ」 俺ガクブル 》