『日本の歴史21 近代国家の出発』五

 色川大吉『日本の歴史21 近代国家の出発』中央公論社1980年45刷を少し読んだ。読むのが遅い。理解が遅いから。もあるけど、気が滅入ってくる。

《 読者はきづかれたことであろう。柳田(国男)の本にでてくる人民は、民権運動にあらわれる人民とは違う、と。この善良で気弱な人びとは、追いつめられると 自分の子を殺し、果ては牢獄においやられ、亡んでゆくことしかできなかったのか、と。
  明治時代の民衆生活において、もっとも悲惨な時期だったこの明治十六年から十九年のあいだに、どれだけの囚人が次から次へと新しく送られてきたか。また、 どれだけの人間が「活計困難」のために自殺し、または「精神錯乱」におちいって自殺したか。 》 「資本主義創世記」 322-323頁

《 しかし、明治初年のこうした昂揚は、十四年の政変後、松方(正義)大蔵卿による本格的な紙幣整理政策が強行されるにおよんで様相を一変していった。 》  「資本主義創世記」 340頁

《 つまり、松方の第一のねらいは、急激な人民への負担強化(増税・デフレ)によって、五、六年間で不換紙幣を切り捨て、兌換制度を確立して、産業資本が 運動しやすい環境をつくりだそうとすることであった。
  それはまた、同時に出発した近代陸海軍建設のための財政的裏づけを確保する絶対不可欠の条件と考えられていた。 》 「資本主義創世記」 343頁

《 そうする以外に道がなかったというのではない。かれらは、莫大な遺産にしがみついていた旧領主階級や、一人で数百万円もためこんでいた大商人たちに 手をつけようとはしなかっただけである。
  それどころか、その者たちを華族にとりたて、「皇室の藩屏」として育てあげるためにも、また産業資本家として育成するためにも、さしずめ百姓たちから とれるだけのものをとろうとしたのが真相である。 》 「資本主義創世記」 344頁

《 この松方の金融政策がいちおう展開し終わったところで、政商たちにたいする官営工場の積極的な払下げが開始された。(中略)もちろん、あたえる道具というのは 、国民(とくに農民)の税金によって造りあげた官営鉱山や、模範工場・造船所であった。 》 「資本主義創世記」 349頁

《 松方財政は、前章にのべたように見るべき成果をおさめた。しかし、その政策の結果、作物の値段が暴落し、農民の現金収入は半減した。(中略)こうして 十六年には、正式に裁判にかけられて破産した者、三万三八四五人であったのが、二年後には一○万八○五○人へと激増した。それは約十万戸ということであり、 一戸あたり四人の家族としても、一年のあいだに四十万人あまりが一切を失って路頭に迷ったのである。破産とまではゆかなくても、中途で示談を乞い、小作人に 転落したものの数は、その数倍にもおよんでいたろう(中小会社の破産件数も、十八年には二万三千件にたっしている)。 》 「資本主義創世記(二)」 353-354頁

《 明治十六年の暮ごろから十七年の春にかけて、まず、伊豆に借金党がつくられ、騒じょうをおこして注目された。 》 「資本主義創世記(二)」 360頁

《 豆州・遠州などはやや遅れて活動を再開し、なかでも君沢郡・田方郡・駿州駿東郡などは十一月の下旬から騒然たる様相を呈していた。 》 「資本主義創世記 (二)」 374-375頁

《 明治十八年の諸新聞がくりかえしつたえたように、飢餓の嵐は日本全国を吹きまくったのである。 》 「資本主義創世記(二)」 383頁

《 こうしてここ数年のあいだに数百万の小豪農・自作農をおしつぶし、六十万戸に近い農家を解体させ、五万社に近い小会社を倒産させて、松方財政は、死骸の山を 戦車でひいてゆくように勝利のうちに驀進したのである。 》 「資本主義創世記(二)」 385頁

《 したがって、明治十九年からはじまる投資熱、いわゆる企業熱時代の到来が、表面いかに明るいムードをまきちらしたものであっても、曇りない眼で陰惨な 基礎過程を見つめてきた人びとをあざむくことはできなかった。 》 「資本主義創世記(二)」 388頁

 寒々した雨の中、朝一番で床屋へ。せいせいして帰宅。郵便受けには味戸ケイコさんと牧村慶子さんから嬉しいお便り。温まる。
 昼食後、人待ち時間があるので、セルビアの歌手 SLADJA ALLEGRO のCDアルバム『 LIVE 』2017年を聴く。元気がでる。
 https://www.youtube.com/watch?v=1GZ7SnIxgMY
 上記は特に気に入っている歌だが、かけているCDでも八番目のこの曲が流れた。なんという同時性。音量を上げる。
 用事を済ませて帰宅。買いものへ。寒い寒い。早々と暖房器具を出す。いやあ暖かい。寒さは我慢しちゃいけないね。

 ネット、いろいろ。

《 不幸の正体は理想と能力の差だというルソーの言葉を、学生のときからずっと忘れずにいるけれど、創作に関して言うと、 そもそも異様に高い理想を持っていなければ書かないし書けない。身の丈に合ったものなんて書こうとしたら、それこそ不幸な時間だろうな。 》 道尾秀介
 https://twitter.com/michioshusuke/status/920429824866320385

《  絵が下手な人にしかわからないこと選手権

  最優秀賞
  上手く書けたと思ったけど、次の日よくよく見てみたら全然うまくなかった事がよくある

  金賞
  内申点がオール5とれないのは美術のせい。

  高齢の住職賞
  模写しても著作権にかからない 》 坊主
 https://twitter.com/bozu_108/status/920566180313567232

《  静岡の駅にあった広告、パワーワードに溢れすぎてて二度見して笑った。静岡県民、パンクすぎるな。 》 佐伯だよ〜エロデューサー
 https://twitter.com/boogie_go/status/920216051991769088

《 「俺たちに茄子はない」というダジャレが突然頭に浮かんできた。だから、何なんだよ。 》 山田正紀
 https://twitter.com/anaryusisu/status/920819094953197568