現代の、美術(閑人亭日録)

 現代美術オークションの落札価格を見ると、おいおい一桁違うんじゃないか、と目を疑う。現代美術(芸術)、現代(コンテンポラリー)アートに分類される美術作品の 大部分の作品に魅力を感じない。タダでくれると言われても遠慮する。私の評価、好みに合わない作品を購入する人たちってどんな人だろう。タワー・マンションに住む 金持ち、か。まあ、あのようなマンションには現代アートはお似合いかもしれない。実見していないから想像だけれど。
 現代という時代はどの時点で近代と入れ替わるのだろう。私が今考えているのは、実証的な視点はないが明治三十三年(2000年)あたりだ。それは、絵画表現様式の 変化から直感的に落とし込んだ。それはともかく。現代美術ではなく、現代の、美術に私は惹かれる。考え抜かれたとおりに制作された現代美術。制作意図のその先に 漏出してゆくようなものは、現代美術には、ない。作家の制作意図を超えてしまったもの、それが当たり前のこととしてある、現代の、美術作品に惹かれる。それらは 作家の制作意図から逸脱した作品なので、いわゆる美術の歴史の網では掬いきれない。歴史認識の枠組みから逃れている作品は、歴史の記述には載らない。そのような 歴史外に位置する作品に、将来歴史認識の光が当てられることは疑問の余地がない。歴史はいつしか書き換えられる。歴史叙述の埒外、辺境に追いやられている作品が、 次世代の美術史では重要な位置を占めているかもしれない。現代美術(芸術)、現代(コンテンポラリー)アートの多くが次世代の価値観、審美眼からはただの残骸でしか ないように、思える。なぜそう感じる(予想する)のか。それらの作品の多くは、地に足が着いていないから、と一言で言える。土着ではなく、つま先立ち、上の空の作品。 オシャレ、と言われる作品の多くはそんな印象のもの。ま、それらを愛する(評価する)人たちから言わせれば、私は一介の市井人、野暮な田舎者。しかし、革命はつねに 辺境、埒外から湧き上がる。
 以上は朝思い浮かぶままに書いたもの。そして夕刻に思う。現代美術家は、尖鋭かつ鮮鋭であろうとする目的意識に因われている。閃影の作品のほうが面白いのに。

 今朝の東京新聞、読書欄「書く人」「読む人」が読ませる。「書く人」の『神前酔狂宴』河出書房新社の著者古谷田奈月(こやた・なつき)へのインタビュー記事。

《 自身も、神社の披露宴スタッフとして十年働いた経験がある。「拝殿前で一礼するのが義務。信仰がないのに、何に頭を下げているのか分からなかった」 》

《 「次は全然違うものを書く。でも、今当たり前と思われていることに疑問を抱くところは同じだと思います」。 》

 知らない書き手。面白い人がいるのもだ。「読む人」にはルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』講談社への師岡(もろおか)カリーマの評、冒頭。

《 人生は、一瞬一瞬の積み重ねだとよく言われる。陳腐にも聞こえるが、愛しい瞬間が増えるほど、たとえ苦難はあっても最終的に幸福な人生と呼ぶべきものに近づく、 と言われてみれば確かにそうだ。 》

 島泰三『ヒト、犬に会う』講談社への片野ゆかの評から。

《 だが読み進むうち、予想外の説得力にひきこまれた。なにしろ言葉の発達に不可欠とされる”負の感情に左右されない丁寧な言い方”は現在、飼い主と愛犬が信頼関係 を結ぶためのトレーニングの基本事項といわれているのだ。 》

 昨夕につづき、昼前に荷物を宅急便で送る。自分たちにとって不要なものがそれを評価する人のところへ引き継がれる。ほっ。
 午後、三島梅花藻の里の雑草刈りの作業を都留文科大の学生たちと行う。日射しは強いが、日陰に入ると涼風。無理せずに作業。若くはねえからなあ。梅花藻を 源兵衛川に移植して作業終了。午後四時半帰宅。シャワー。

 ネット、うろうろ。

《 とすると、そうした言語的メッセージを凌駕する、あるいはそれに反する形で溢れ出る、倫理的問いとは別のレベルの「芸術的」としか言いようのない何かが 重要になってくるが(というか作品とはそういうものだが)、多くの作品でそれはそれぞれの倫理的問いに従属、奉仕するものとしてあるように見えた。 》 大野左紀子
  https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1165425543195422720

《 そう言う意味では、「アートで街おこし・島おこし」にすがる住民の気持ちも痛いほど分かる。問題は、それが弱り目に付け込んだ詐欺師の売るゴミクズ健康食品 なのか、あるいは特効薬なのか、はたまた死期を早めるだけの毒なのか分からないって事なんだよな。それでもそれにすがるのが人情ってもんだ。 》  パ一ティフ一ド同好会
  https://twitter.com/partyfoodism/status/1165453927879344128

《 今日はコペンハーゲンのかなり北にあるカレン・ブリクセン博物館に行ってきました。「バベットの晩餐会」『アフリカの日々』の著者です。 新刊で映画版『バベットの晩餐会』の批評を書いているので期待してたのですが、お屋敷も展示もとても充実した博物館でした。 》 saebou
  https://twitter.com/Cristoforou/status/1165328384207020034

《 加齢の現実は、かなり辛いものがある。とほほのほ。 》 takashi murakami
  https://twitter.com/takashipom/status/1165230110661697537