『かたちは思考する』三(閑人亭日録)

 平倉圭『かたちは思考する  芸術制作の分析』東京大学出版会2019年初版、「第2章 斬首、テーブル、反光学──ピカソアヴィニョンの娘たち》」を読んだ。 『アヴィニョンの娘たち』、どこがいいのかわからなかったが、制作過程への見事に精緻な分析で納得できた。そういうことかあ。
  http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~fujikawa/03/kita/01/pica_dem.htm

 《 画面下部に垂直に立ち上がったテーブルの上では、滑り落ちまいとする果物たちが必死に結集している。しかし「しゃがむ女」の顔面はすでに、諸形象が水平に 配置されるテーブル=タブローの新しい局面を告げ知らせている。実際その顔面は、目や口といった顔面の諸パーツが福笑いのごとく動きまわる、コラージュのようでは ないか。 》 72-73頁

《 《アヴィニョンの娘たち》の五◯年後にあたる一九五七年、ピカソは《ラス・メニーナス》をモデルとした連作を描いている。(中略)そこに私たちは、絵画を 統一された「視線」の問題へと収斂させまいとする画家の執拗な態度を認めることができるはずだ。 》 75頁

《 「しゃがむ女」の顔は、その配置によってカンヴァスの他の領域を取り集める構造的必然性を獲得している。 》 76頁

 『アヴィニョンの娘たち』が、マルセル・ヂュシャンの便器を使った『泉』とともに現代美術の扉を開放したが・・・。それから百年。次の時代が始まっているような。

《 ──実のところあらゆる絵画制作につきまとうこの〈眼と手の分裂〉という事態を、配置からなる絵画は、手の眼に対する優先という新たな問題として顕在化する。  》 74頁

 「第3章 マティスの布置 一九四五年マーグ画廊展示における複数の時間」を読んだ。

《 マティスは描き直す際、不要な箇所をしばしば溶剤できれいに拭き取ってから描くため、制作の手数の多さが物質的な積層としては画面にあまり残らない。 マーグ画廊に展示された記録写真は、薄く明るく完成した画面に代わって、それが通過してきた労苦の厚みを目に見えるものにしているのだ。 》 85頁

 北一明の耀変茶碗の実現に至るまでの労苦の厚みを最早、知ることはできない。

《 マティスの絵画をプロセスへと開くだけでは十分ではない。そのプロセスにおいて、いかなる質的飛躍が生じたのかが分析されなくてはならない。 》 86頁

《 言うまでもなく、およそ絵画を見るとは過去の殺到を見ることだ。私たちは一枚の絵画を見るとき、カンヴァスの上にさまざまな時点で重ねられた過去の手数が、 一挙同時に表面の現在へともたらされるさまを眺めている。 》 93頁

 過去の殺到・・・『実在への殺到』清水高志

 「第4章 屏風の折れ構造と距離 菱田春草《落葉》《早春》を見る」を読んだ。

《 だがそれだけでは足りない。描かれた奥行きには、屏風の扇がかたちづくる、立体的な「折れ構造」が重ねられているからだ。山折れになった扇の境は視界に 鮮やかな縁(へり)をつくり、縁を越えたところに新たな風景を開く。ちょうど林を散策する者が、木の幹を過ぎるたびに新たな空間の広がりや狭(せば)まりに出会う ように。《落葉》には、屏風の折れ構造がもたらす散策的な経験がある。 》 98頁

《 ──画には全体を捉える適切な「観望の距離」がありうる。だがその適切な距離の法則を「犠牲」にし、斜めから、あるいは近づき、遠ざかりして見られる 「画の面白味」もまたあるのだ、というように。屏風は正面から遠望されるだけの平面ではない。 》 100頁

 この『落葉』、正面からしか見たことがない。ずっと接近して右から左から眺めてみたい。が、展示会場では接近は無理か。

 「第5章 合生的形象 ピカソ他《ラ・ガループの海水浴場》の物体的思考プロセス」を読んだ。「第I部 形象の生成」読了。

 ネット、うろうろ。

《 アルツハイマーになった画家が、病気が進行して死ぬまでの間描き続けた自画像が鬼気迫る。精神が崩壊する過程と説明されているが、美的な点だけで言えば、 どんどん良い絵になっていってると思う。線画の本質だけが残った感じだ。 》 森岡正博
  https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1192592608477863937

《 今や国家が芸術を包括していく力は、芸術が既存秩序や価値観を転倒させようとする力よりはるかに大きく、国が権力を批判する作品を含む芸術展に堂々と お墨付きを与えるのと、国が同じような芸術展の「事業取り消し」を決めるのとは、カードの表と裏に過ぎない。カードは常に向こうの手にある。→ 》 大野左紀子
  https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1192610151842209792

《 こういう中で現代アートはどういう突破口を見出して行こうとしているのだろうか。権力や世俗からの承認/非承認の枠組みを巡って戦わざるを得ないだろうが、 そこでの一喜一憂は結果的に、「芸術は国家を含めた自らを支える基盤を本当に問えるのか」という大きな問いを見えなくするのではないだろうか。 大野左紀子
  https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1192610636171104256

《 若い人らは知らんやろけど、安倍晋三の組閣した内閣以前には現職大臣の不祥事が続くなんてほとんど無かったんよ。何故なら違法性の疑われる不祥事があったら ほとんど内閣総辞職してたから。これ、嘘と違うで、ホンマやで。 》 Masa da Oldskooler
  https://twitter.com/itsgroovymasa/status/1192013396406726657

《 これらは密接に繋がっていることが疑われるが、なにせ日本国の議事録は改竄なんて朝飯前の代物だから、本当は何が話されたかは永久に分からない。 昨日は安倍が書類捏造云々と野次を飛ばしていたが、これは自分たちがやっていることは相手もやっているだろうと言う願望から出た言葉なのだと思う。 》  位置@ファンタジー馬鹿
  https://twitter.com/ichitawake/status/1192474040637673472

《 老人の走馬灯とともに製造産業の栄華の名残が消えたなら、あとは観光資源をやりくりして生きていくほかなかろうとの未来予想に基づいて、 国民のプリミティブ度を濃くすべく文化・教養・国際感覚を積極的に切り下げていく類の国家100年の計でも、どこかで立てられているのか。 》 Masamichi UEO
  https://twitter.com/m_ueeeeeo/status/1192054233735950349

《 山本太郎特集で売れ行きが1.5倍!『Newsweek』編集長「山本代表が野党を飲み込んでしまう可能性もある」 》 Ameba TIMES
  https://times.abema.tv/posts/7027157

《  あのな。

  日本で「任意」「志願」と言われたら
  それは「強制」の意味なんだよ。

  何年日本人やってんだよ 》 yunishio
  https://twitter.com/yunishio/status/1192482838999789568