『草枕』(閑人亭日録)

 夏目漱石草枕新潮文庫1988年86刷を再読。1906(明治39)年発表。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E6%9E%95
 初読時におお、と思ったのは、語り手の画工が旅館の部屋で寛いだくだり。

《 横を向く。床にかかっている若冲の鶴の図が目につく。これは商売柄だけに、部屋に這入った時、既に逸品と認めた。若冲の図は大抵精緻な彩色ものが多いが、この鶴は 世間に気兼ねなしの一筆がきで、一本足ですらりと立った上に、卵形(たまごなり)の胴がふわっと乗(のっ)かっている様子は、甚だ吾(わが)意を得て、飄逸の趣は、 長き嘴(はし)のさきまで籠っている。 》 31頁

 今回もおお、と思った。この鶴の図は、展覧会で見て感心した。1906年には左様に有名だった伊藤若冲だが、1960年代にはすっかり忘れられていた。外国人が買ってからの 復活は、知られている。まったく、日本人コレクターは「知らないからいらない」だから。それは小原古邨でも繰り返された。業者が小原古邨の作品を生まれ故郷金沢の 石川県立美術館へ売りに行ったら「知らないからいらない」と言われたという話を二十年ほど前に人伝えに聞いた。日本人の多くは、作品を見て良し悪しを判断できない のだろう。北一明もそうだった。飯田市に帰郷して人知れず亡くなった。今じゃ「郷土の偉人三人」の一人。
 https://blog.nagano-ken.jp/shimoina/other/4521.html/2
 http://www.minamishinshu.co.jp/center/series/022.PDF
 http://www.minamishinshu.co.jp/center/series/023.PDF
 上記『資料渉猟余話その23 吉澤健」 誤「油滴点目」 正「油滴天目」。目が点になる。

 初読の時には気づかなった面白味を随所に発見。

《 茶と聞いて少し辟易した。世間に茶人程勿体ぶった風流人はいない。広い詩界をわざとらしく窮屈に縄張りをして、極めて自尊的に、極めてせせこましく、必要もない のに鞠躬如(きっきゅうじょ)として、あぶくを飲んで結構がるのは所謂茶人である。あんな煩瑣な規則のうちに雅味があるなら、麻布の聯隊のなかは雅味で鼻がつかえる だろう。 》 53頁

 詩界。斯界か視界の誤字の気がするが、夏目漱石は当て字が多いからその一例かも。

《 濃く甘く、湯加減に出た、重い露を、舌の先へ一しずくずつ落して味わって見るのは閑人適意の韻事である。 》 96頁

 ここから閑人を拝借した記憶はない。

《 「話しちゃ駄目です。画(え)だって話にしちゃ一文の価値(ねうち)もなくなるじゃありませんか」
  「ホホホそれじゃ読んで下さい」 》 110頁

《 「ホホホじゃ聴きますまい」
  「普通の小説はみんな探偵が発明したものですよ。非人情な所がないから些(ちっ)とも趣がない」 》 111頁

《 「私が身を投げて浮いている所を──苦しんで浮いている所じゃないんです──やすやすと往生して浮いている所を──奇麗な画にかいて下さい」
  「え?」
  「驚いた、驚いた、驚いたでしょう」
   女はすらりと立ち上がる。三歩にして尽くる部屋の入口を出るとき、顧みてにこりと笑った。茫然たる事多事(たじ)。 》 117頁

《 何だか考(かんがえ)が理に落ちて一向つまらなくなった。こんな中学程度の観想を練りにわざわざ、鏡が池にまで来はせぬ。 》 119頁

《 画をかきに来て、こんなことを考えたり、こんな話しを聴くばかりでは、何日(いくにち)かかっても一枚も出来っこない。 》 127頁

 『草枕』、こんなに面白いとは。引用した箇所は他にいくつも。じつに味わい深い。今さらだが、傑作だろう。

 ネット、うろうろ。

《 日露戦争あたりから人気が出て、売れまくった「時局地図」です。周辺諸国が赤やピンクに塗られて国土が広がっていくのを軍と一緒に国民が喜んだ時代。 その先の結末がどうなったのかはご承知のとおり。歴史を振り返り、二度と過ちを繰り返さないためにはこんな地図を知っておくのも大事かもしれません。 》 清水 潔
 https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1270701565012094977

《 #沖縄県議選 が終わった途端に #辺野古移設 の工事着手。工事中止で一時的に関心を逸らす。いつもと同じでやり方が汚い。 》 望月衣塑子 https://twitter.com/ISOKO_MOCHIZUKI/status/1271242733248638976

《 参予算委 小西「安倍総理に伺います。黒川検事長の処分権者は誰ですか?」

  下を向いたまま原稿を整えつつ、アレ「黒川ぁ氏の処分について、法務省に於いて、必要な調査を行った上で、法務省および検事総長において、ぇ事案の内容ぉ等、 諸般の事情ほ総合的に考慮して、ぇ訓告が相当であると判断し、 》 buu
 https://twitter.com/buu34/status/1271080051061092352

《  参院予算委。

  小西「森大臣は"↑の2,3,5があてはまる"と仰るのに、どうして処分を決めるときにそれを考慮しなかったのですか? お答えください。これで4回目ですよ?」
  森「あてはめを行う必要がないと考えぇ」
  小西「あてはめが必要ない例示・基準とは何ですか?」

  答えられなくなった森法相。 》 インドア派キャンパー
 https://twitter.com/I_hate_camp/status/1270910726740209664