『レンマ学』十五(閑人亭日録)

 中沢新一『レンマ学』講談社二○一九年八月六日 第一刷発行、「付録二 レンマ的算術の基礎」を読んだ。

《 この縁起法こそが世界の実相なのである。 》 381頁

《 人類がそれを知ろうが知るまいがに係わりなく、縁起法は作動し続けている。縁起法は法界(存在世界)のあらゆるところで活動し、隙間なくそこを充たしている。
  この縁起の網の目は無限であるから、因果律に束縛されている知性によっては、これをとらえることができない。(引用者・略)しかし自我によって組織されている知性を、無我による構造につくりかえることができれば、人間の心の内部から、非因果律的な別種の知性が姿をあらわす。 》 381-382頁

《 このレンマ学が通常の実証科学にはなりえない特殊な学問であることを、はじめに断っておかなければならない。 》 385頁

《 法界は普通の世界(スタンダード宇宙)ではなく、実無限としての無限小と無限大を含む、超準的世界(ノンスタンダード宇宙)のなりたちをしている。そのためこの世界に存在するどんな実数も、「生起」する数として、自分の周りに無数の無限小をまぶされまとわりつかせている。 》 393頁

《 こうしたことの類推から言うと、縁起論的な世界とふつうの因果論的な世界の関係も、けっして対立的なものではなく、因果律的世界で起こることのすべては、縁起論的世界でもおこりうるのであるが、縁起論的世界には因果論的世界にはけっして含まれない出来事が起こるのである。この関係は「拡張」というような言葉では言い尽くせない。
  超準解析では、標準数とその上に構築される標準的な世界と、超準的数の構成する超準世界の関係を図のような「標準的」「内的」「外的」という三つのカテゴリーの関係として理解してきたが、我々の因果律的世界と縁起論的世界との間にも、それとよく似た「標準的」「内的」「外的」の三層構造を考えることができるかも知れない。
  この三層構造において、古典物理学と古典計算機は「標準的」な数と算術で構成されているが、量子論はノンスタンダードな数と算術を含む「内的」な集合において展開される。また『華厳五教章』や我々の「レンマ学」なども同じようにして「内的」である。ところが「華厳経」自体は、そこにも含まれない「外的」な要素を含んでいる。 》 407-408頁

《 古典物理学が描く現象の中で同時に量子論的な出来事が生起しているように、因果律的に動き変化している「凡夫」の世界とまったく同じ場所で、「如来」の活動も続けられている。大乗仏典はじつにそのような描写に満ち満ちている。その描写がどこか矛盾をはらんでいるように感じられるとしたら、それは縁起論的な「外的」な事物を、因果律的な「標準的」な事物として語ろうとしているからであろう。 》 408頁

《 そのレンマ的算術の仕組みが、二十世紀に出現した量子論の本質をなす非可換構造と一致したのである。これはいったいなにを意味するのであろうか。
  それは量子論の根底に、レンマ的=縁起論的な思考が横たわっているからである。別の言い方をすれば、物質の微細レベルに起こることを記述するためには、思考はどうしてもレンマ的=縁起論的になっていかざるを得ない。そこから、いわゆる「量子論パラドックス」なるものが発生してくる。 》 409頁

《 量子論は物質世界についての真に縁起的思考に開かれた、はじめての物質理論なのである。しかしそのことを明確にわかっていたのは、ことによるとボーアをはじめとするごく少数の人々だけだったかも知れない。 》 409頁

 午前、源兵衛川中流、下源兵衛橋上流の雑草を十人ほどで刈り取る。カワセミが上流へ飛翔していく。正午過ぎに帰宅。くた~。少し昼寝。

 ネット、うろうろ。

《 時事通信から、「成人の日によせて」という原稿の依頼が来て書いたのですが、書いた文章に20カ所以上の直しが入りました。「体言止めが美しい」というような理由で、納得できないと申し入れたら決裂しました。せっかく書いた文章なので、ここに載せます。多くの若者に届きますように😊 》 鴻上尚史
https://twitter.com/KOKAMIShoji/status/1611178777027174408

《 プラトンの『プロタゴラス』を読み返すと、「アテナイ人が議会に集まるとき、たとえば国家事業として土木建築を行わないといけないようなときにはその専門家を呼んで話をきくが、国事の処理を審議するときにはそのような「専門家」ではなく、誰でも同じように意見を述べあう。国事そのものは教えうる 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1611594461062266880

《 ものではないと考えられているからだ。」と言われているんだけど!これはまさに今の日本に当てはまる議論だよな。何かの「専門家」と称する人に国家の全体を左右する問題を決めさせてしまうのは危険なことだ、というのは古代から論じているんだな。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1611594462907764737

《 オミクロンの感染力は凄まじい。中国さえもgive up。今、日本を含めて世界では感染防御をほぼ諦め、どこまで社会が感染拡大に耐えられるか?の実験中と言える。日本は第8波の惨状で、現在の検査体制、医療体制ではもたないことが証明され。戦略を練り直さずにこのまま突き進むと被害が大きくなるだけ。 》 Koichi Kawakami, 川上浩一
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1611360543205646336