深層表現派(閑人亭日録)

 四半世紀ほど前、K美術館を開くにあたって「深層表現派」という用語を自作した。味戸ケイコの絵、北一明の焼きもの、深沢幸雄の銅版画などを一括して深層表現派と勝手に名づけた。振り返れば、美術界の現状に違う視点(の砂粒)を投げ込もうと意気込んでいた。でなければ、私設美術館を自前の資金だけで作ろうとは思わない。コレクターでは何の意味もない。展示する場所を作らなくては。展示品の特徴を考えて「深層表現派」が浮かんだ。
 今にして思えば、昨日記した縄文土器との出合いへの最初の一歩だった気がする。縄文土器こそ真「深層表現派」なのだ。まあ、これは戯言としておこう。しかし、縄文の深鉢。使用目的は何であれ、土に埋められて幾千年、再出現して深鉢と呼ばれる縄文土器の、その形態は私に深い衝撃、感動を与えた。現代の美術作品を根底から揺さぶる、その迫力、魅力、底知れぬ造形力。まさしく深層からの表現。
 その遥かな谺、響きを、味戸ケイコさんの絵にかすかに聞き取る。そして、白砂勝敏さんの特に木彫造形作品にも感じる。
 味戸ケイコ
 http://web.thn.jp/kbi/ajie.htm
 白砂勝敏
 https://shirasuna-k.com/gallery-2/wood-sculptures-chair/