『応答、しつづけよ。』五(閑人亭日録)

 ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』亜紀書房 2023年6月2日 初版第1刷発行、「地球の年齢」を読んだ。

《 ヒ素カドミウム、クロム、銅、鉛、水銀、ニッケルと亜鉛。どれも微量であれば無害ですが、高濃度になると致命的です。しかし、もともとは大地から生まれてきたものによって、どうして大地が毒に侵されれるのでしょうか? 》 216頁

《 たぶんその答えは、現象世界を構成する要素だった金属を、観念の上で周期表の原子の「元素」に還元する化学的還元にこそあります。砕いたり、選別したり、洗ったり、ろ過したりすることによって、「金属」は金属から分離されてきました。かつては無限に変化し、不均質だった物質が、多数の純粋な形態に分割され、蒸留されたのです。(引用者・略)汚染は危険かもしれませんが、すべてのうちで最も危険なのは、潜在的な汚染物質の浄化──再結合や再放出ですが、いったん純粋な種類に分離されたものを再混合したり再結合したりすると、恐るべき巨大な力を発揮します。それを証明するのが核爆発です。 》 217-218

《 私たちは、人の顔や手のシワからその人の人生の物語を読むことができるように、石の表面の質感からその歴史や性格を読むことができます。 》 233頁

《 それでは、彫刻家が石を手に取り、それを彫る時、この石はどのような表面を生み出すのでしょうか? それは傷跡なのでしょうか、あるいは膜なのでしょうか?
  まずは傷跡であり、次に膜でもあるのです。 》 234頁

《 彫刻家もまた、素材を研磨して滑らかにし、その質感を引き出しながら、荒れ狂う風、波立つ海、川の流れに沿って、あたかもそれらと一体化するように、作業の中に加わっていくのです。 》 234-235頁

《 アートにおいても建築においても、持続可能性とは、果てしない均衡を保つことではなく、生を維持することにおいての可能性なのです。 》 250頁

 12日に白砂勝敏さんが静岡グランシップで展示する木彫椅子を借りに来たとき、手土産に自家製の蜂蜜をくださった。軽みのある味で透き通ったおいしさに友だちはえらく喜んだ。以来、私は賞味して(させてもらって)いないが、その蜜蜂について白砂さんが興味深い記事「日本みつばちがかわいくて仕方ない」をあげた。
 https://www.spinart.jp/contents/kiji-shirasunakatsutoshi-230818.html