『応答、しつづけよ。』六(閑人亭日録)

 ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』亜紀書房 2023年6月2日 初版第1刷発行、「線、折り目、糸」を読んだ。

《 風景の中にも線はあるのです。 》 284頁

《 風景の中に線があるのは、あらゆる風景は運動の中で形成されるからであり、またこの運動が、その進行の多様な経路に沿って物理的な痕跡を残すからです。これらの線を認識することは、モノをそのまま見るのではなく、モノがそれに沿って動いている方向を見ることです。それは、モノのレイアウトや形式的な外被を見ることではなく、その粒、質感および流れをみることです。私たちが紙の上の黒鉛の汚れを線として認識するのは、それが進んでいく仕方を見ているからであり、これは、溝やヨシでも違いはありません。 》 285-286頁

 「言葉への愛のために」を読んだ。

《 頭字語は、存在を否定し、問題を心から消し去り、感情を追い出します。しかし同時に、頭字語は、スキルや注意力に基づいた権威ではなく、合理的な管理の客観的な原理とみなされているものに基づいた権威を示しています。そのように、頭字語はその両方の意味で監視の道具なのです。(引用者・略)
  軍事作戦の分野ほど、このことが顕著に表れているところはありません。 》 346-347頁

《 そして愛が研究に変わるように、言葉好き(ロゴファイル)は文献学者=言語愛好者(フィロローグ)になるべきなのです。言語愛好者は、科学技術の影響で、古物商のホコリだらけの趣味のように学問の片隅に追いやられてきましたが、ふたたび主役になるべきです。その中にこそ学問の未来があり、私たち人間の未来があるのです。 》 350頁

 ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』亜紀書房、本文読了。奥野克己「訳者解説」は明日読む。

 猛暑日。外出するのをためらう。午後、日影になった歩道を歩いて近くの郵便局へ。切手などを購入。帰宅。そばの百円ショップでお買いもの。食料品は以前あった商品がない。楽しみが減った。