ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』亜紀書房 2023年6月2日 初版第1刷発行、「森の話」を少し読んだ。「吐き、登り、舞い上がって、落ちる」を読んだ。
《 山は登るためのものであり、丘は歩くためのものです。登山家は、山という資格を与えるには高さが十分ではない地形として、丘のことを軽蔑的に語る傾向があるのですが、それらの真の違いは、土地と形状、あるいは地面と特徴の間の関係をどのように理解するのかという問題に帰着しまう。歩く人は、上り坂でも下り坂でも平地でも、足によって地面と継続的な接触をしています。そのため、地面自体は波打っているように見え、丘や谷は、その襞なのです。この波形は、重力に沿っても、あるいは逆らっても、筋肉の中に感じられます。 》 115頁
《 毛筆は、鳥の飛翔や薄雲の形からしばしばインスピレーションを得ています。ここでは、飛んでいる筆が紙をかすめ、乾いた地面の塵の中を通り過ぎる風の渦巻きのように、その痕跡を残します。歩行者の線、航行者の線、そして作家の線は、すべて飛行の線です。そして、そのような線の特徴は、たんにそれらが空中にあるというだけでなく、それらが起源と目標の明確化を免れているということでもあるのです。彼らはAからBへではなく、物事の真っ只中を通り抜けます。 》 123頁
三十年前に北一明から、書について書く人がいないから書いてくれ、と依頼されて書いた拙文『 創造の「書」 「書」の創造 』を思い出す。
http://web.thn.jp/kbi/kitashoron.htm
三島市の広くない旧市街地の大通り、裏通り、小路を歩いていて、わずかな距離での高低差に気づく。その高低差が面白い。そして、西から蓮沼川、源兵衛川、四の宮川、御殿川、桜川そして東の大場川まで、ほぼ北から南へ下る流れを横断するように流れる細い水路を辿ることは、興味が尽きない。道路の際、民家の裏側、暗渠、墓地の中を西から東へと流れていく水路。水は高きから低きへと流れる。終わりはどこにある? それを探るのは楽しい。
蓮沼川から分岐した水路は源兵衛川へ下り、源兵衛川から分岐した水路は四の宮川へ入り、四の宮川は御殿川へ入る。その御殿川は桜川から直角に分岐し、途中から一級河川御殿川となり、大場川へ入る。桜川は、南へ流れ。おそらく、大場川へ入る。桜川から三島市役所前で東へ直角に分岐した水路は、東の大場川へ。そして、曲がりくねって流れるいくつもの名もない、一足で渡れる狭い水路は、民家の裏側を抜けて、暗渠になり、どこへやら。未探検がいくつも。水路探検はおもしろい。
陸上トラック競技の周回コースで、集団の一番を走っている選手がじつは最終ランナーってことはあり得る。逆に最終ランナーと思われた選手がじつは先頭ランナーだった、ということもあり得る。そんなことを思ったのは、美術における新しい、古くさいの違い。「ちいかわ」というキャラクターがテレビで話題になっていた。
https://www.anime-chiikawa.jp/
名前は知っていたが、それだけだった。「かわいい(kawaii)」から「ちいかわ(chiikawa)」へ時代が移ってきた気がする。最終ランナーと思われたモノが、じつは最先端だった、という見方=認識の変化。昨日までの三日間の祭りで最も印象深かったのは、露店の「アンパンマン・ミニ・カステラ」。アンパンマン型に型抜きされた小さな一口カステラ。我が家の向かいに店はあったが、つねに行列。内野まゆみさんが買ってきて友だちが連れてきた子どもたちに贈ったらとても喜ばれた、と一個をくれた。たしかにこれはこれでいい。晩、早々と売り切れ。