小原古邨(閑人亭日録)

 小原古邨(おはら・こそん)の木版画に出合ったのは、1998年、三島の茜画廊でのことだった。画廊主も名前の読み方を知らない。しかし、「烏は嫌いだが、この烏の木版画はいい」と購入。それが「柿に烏」。
 http://web.thn.jp/kbi/koson.htm
 まだインターネットを使っていなかった。なにかの図録で小原古邨の展覧会を知った。それが当時横浜そごうにあった平木浮世絵美術館「小原古邨の世界 ─西洋で愛された花鳥画─」だった。期間は1998年10月1日~11月21日で、既に終了していたが、会場へ赴いた。図録を数冊買い求め、知人たちに配った。「ごあいさつ」から。

《 小原古邨(1877~1945)は鈴木華邨に師事し、静謐な趣きの花鳥画に才を発揮しました。
  明治期に浮世絵は日本人に認められることなく海外に流出してしまいます。古邨の花鳥画も多数が輸出され、そこで高い評価をうけました。
  比べて日本では作品を見ることも稀でしたが、この度、版画の原画とその下図という貴重な資料が発見され、古邨への評価を改める機会を得ました。下図と画稿からは写実に基づいた精緻な筆遣いが確認されました。また、色彩の繊細な濃淡までを木版画に再現した彫師、摺師の高度な技術は世界に誇り得るものです。 》 館長 佐藤光信

 1999年、k美術館で小原古邨を中心にした木版画の展覧会を開催。平木浮世絵美術館同様、閑古鳥が鳴いた。
 2000年、インターネットを使い始めたばかり、グーグルだったか、小原古邨を検索したら、たった18件。美術家事典の類にも未掲載。
 2001年、3月~7月、オランダ・アムステルダム国立美術館で小原古邨展開催。日本人では初という。立派な全作品集が、オランダの出版社から商業出版される。
 2002年、k美術館で「小原古邨と周辺」展を開催。
 2007年、季刊『版画芸術』135号阿部出版、特集「知られざる木版画絵師 小原古邨/小林かいち」。版画を借りに編集長秋田真波さん来館。
 2013年、清水町町制50周年記念で、テレビ東京開運!なんでも鑑定団』ご当地鑑定を清水町で開催。事前調査でディレクターから何か出品してくれと依頼の電話。小原古邨の裁断前の三枚摺り一枚を提案。後日連絡が来る。中島誠之助がこれから騰がるから出さないでくれ、と言われた、と。出品取りやめ。
 2018年、『小原古邨 木版画集』阿部出版のために我が家へ『版画芸術』編集長とカメラマンが写真撮影に来訪。後日、本を贈られる。163頁下段に「256 漁船」、214頁中段左に「裁断前の作品」が掲載。写真撮影をした烏の木版画二点は未掲載。問い合わせると、編集の都合でカットした、と。233頁、「小原古邨 展覧会履歴」には「2002(平成14年)2月 「小原古邨と周辺展 蘇る明治・大正期 花鳥木版画の世界」 k美術館、三島」。なお、218頁左段に誤植。(誤)高橋省亭=(正)高橋松亭。
 2018年、茅ヶ崎市美術館での小原古邨展へ、依頼されて資料を貸し出し。
  https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/2089/
 NHK『日曜美術館』特集小原古邨の放送後、茅ヶ崎美術館へ行くと、長蛇の列。学芸員に面会すると、お礼に贈る図録が売り切れてしまいました、と。手ぶらで帰宅。
 2022年、近くの佐野美術館へ小原古邨展が巡回。小池満紀子の講演を聞く。講演者は、「三島には古邨のファンがいて、こわい」といった旨の発言。そりゃそうだ。二十世紀末、「古邨まつり」状態だった。